季節性の組み入れによるライジングプレートメーターの検量線の推定精度向上

要約

寒地型牧草の草量とライジングプレートメーターの測定値との関係には季節的な変動があるため、説明変数に日付を加え、季節変動を考慮した検量線を作成することで、草量の推定誤差を小さくできる。

  • キーワード:放牧草地、寒地型牧草、季節変動、ライジングプレートメーター、草量推定
  • 担当:自給飼料生産・利用・公共牧場高度利用
  • 代表連絡先:電話 029-838-8611
  • 研究所名:畜産草地研究所・草地管理研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

放牧草地の草量を正確に測定することは、牧場管理や研究において重要である。ライジングプレートメーターは、非破壊により草量を推定する一般的な道具の1つであり、放牧地内の圧縮草高をライジングプレートメーターで測定し、別途作成した検量線を用いて、その測定値を草量に換算する。この際に用いる検量線は、草量の推定時ごと、あるいは通年で1つのものとして作成することが一般的であるが、前者は作成に掛かる労力が大きく、後者は推定誤差が大きい。そこで、寒地型牧草の草量推定に利用可能で、作成に掛かる労力が少なく、かつ推定誤差も小さい検量線を提案する。

成果の内容・特徴

  • 寒地型牧草の草量とライジングプレートメーターの測定値との関係を直線回帰したときの係数には季節的な変動があり、枯死部や出穂茎の割合が多い時期を境に傾向が変化する(図1)。
  • 直線回帰の係数の季節変動を考慮し、説明変数に日付(1月1日からの日数)を加えた2種類の検量線を新たに提案する(表1)。
  • 新たに提案した検量線は、複数回分のデータを合わせることで、草量の推定時ごとに検量線を作成する必要が無く省力的である。また、従来の通年で一定の係数を持つ(= 季節変動を考慮しない)検量線と比べて、小さな誤差で草量を推定することができる(図2)。
  • 提案した2つの検量線のうち、直線型の方がより単純で一般的な利用に適するが、早春の草量測定にも使用する場合には曲線型が適する。

成果の活用面・留意点

  • 寒地型放牧草地における放牧管理や研究のための草量推定において、省力的な推定精度向上技術として活用できる。
  • 検量線の係数は植生や管理状態の影響を受けるため、放牧草地ごとに検量線を作成する必要がある。また、年次間差も大きいため、年次ごとの作成が望ましいが、過去のデータに基づいて作成する場合には、少なくとも3年間以上のデータを用いる。

具体的データ

図1,表1

その他

  • 中課題名:預託期間拡張を可能とする公共牧場高度利用技術の開発
  • 中課題整理番号:120c4
  • 予算区分:交付金、委託プロ(えさプロ)
  • 研究期間:2008~2013年度
  • 研究担当者:中神弘詞、板野志郎
  • 発表論文等:Nakagami K., Itano S. (2013) Grass Forage Sci, DOI: 10.1111/gfs.12070