アマニ油脂肪酸カルシウム給与で交雑種牛の出荷月齢が短縮できる

要約

アマニ油脂肪酸カルシウムを肥育後期の交雑種雌牛に給与することで、増体日量が高まり、出荷月齢を1ヶ月短縮しても通常肥育と体重や枝肉成績に差はない。

  • キーワード:アマニ油脂肪酸カルシウム、交雑種雌牛、肥育、メタン
  • 担当:気候変動対応・畜産温暖化適応
  • 代表連絡先:電話 029-838-8611
  • 研究所名:畜産草地研究所・家畜生理栄養研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

飼料価格の高騰・高止まりが続く中、肥育牛生産費の約50%を占める飼料コストの低減は喫緊の課題であり、肥育期間の短縮など飼料給与の効率化を図ることが強く求められている。脂肪酸カルシウムは牛への高エネルギー飼料として広く用いられているほか、メタン産生量を抑制する効果も知られている(柴ら、2001)。そこで、本課題では肉用牛飼養頭数の約18%を占める交雑種にアマニ油脂肪酸カルシウムを給与し、出荷月齢の短縮の可能性や枝肉成績に及ぼす影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 民間農場において交雑種雌牛26頭を用いた肥育試験を実施する。試験飼料は当該農場の慣行飼料または慣行飼料にアマニ油脂肪酸カルシウムを添加した試験飼料を用いる。試験区として19ヶ月齢肥育開始から27ヶ月齢肥育終了まで慣行飼料を給与する対照区(C区:9頭)、同期間試験飼料を給与するアマニ油脂肪酸カルシウム添加・通常区(FC1区:8頭)のほか、18ヶ月齢肥育開始から26ヶ月齢肥育終了まで試験飼料を給与するアマニ油脂肪酸カルシウム添加・短縮区(FC2:9頭)を設ける。なお、飼料へのアマニ油脂肪酸カルシウムの添加量は、乾物摂取量当たりFC1区は2.9%、FC2区は2.7%とする。
  • 肥育期間中の体重の推移を図1に示す。肥育開始時体重はFC2区(18ヶ月齢)がC区およびFC1区(19ヶ月齢)より約40kg少ないが、肥育終了時(26ヶ月齢)の平均体重は753.1kgでC区(27ヶ月齢)の751.2kg と違いはない。また、肥育終了時(27ヶ月齢)体重はFC1区がC区より約10kg 大きく、増体日量(kg/日)はC区0.62、FC1区0.65、FC2区0.77である。
  • 試験期間中の飼料総摂取量はC区が2,095kg、FC1区が1,893kg、FC2区が2,069kg で、アマニ油脂肪酸カルシウムを給与することで、C区よりFC1区で約200kgの飼料摂取量が少なく、FC2区では出荷月齢を27ヶ月齢から26ヶ月齢に1ヶ月短縮できる結果、1ヶ月分の飼料が節減できる。
  • 図2に示すとおり17ヶ月齢から脂肪酸カルシウムを給与して出荷月齢を1ヶ月短縮しても通常肥育と同等の枝肉成績が得られる。

成果の活用面・留意点

  • 交雑種肥育後期牛の出荷月齢短縮に向けた脂肪酸カルシウム給与の基礎飼料として利用できる。
  • 出荷月齢の短縮やアマニ油脂肪酸カルシウム給与による消化管内発酵からのメタン抑制が期待できる。
  • 牛の採食行動などを観察して脂肪酸カルシウムの給与量を調節する必要がある。

具体的データ

図1~2

その他

  • 中課題名:畜産由来の温室効果ガス制御技術の高度化と家畜生産の温暖化適応技術開発
  • 中課題整理番号:210c0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2009~2013年度
  • 研究担当者:永西修、荻野暁史、加藤陽平(京都大)、大石風人(京都大)・熊谷元(京都大)、広岡博之(京都大)、合原義人(茨城肉用研)、岩間永子(茨城肉用研)、石田修三(太陽油脂)、丸山晶(ニチレイフレッシュ)
  • 発表論文等:加藤ら(2011)システム農学、27:35-46