乳酸菌由来の芳香族乳酸は紫外線照射による角化細胞の炎症反応を抑制する

要約

乳酸菌Lactobacillus plantarum が産生する芳香族乳酸の光学活性はL体であり、L体およびラセミ体の芳香族乳酸は、ヒト株化角化細胞への紫外線B波照射により引き起こされる炎症性サイトカインの産生を阻害する。

  • キーワード:抗酸化物質、インドール乳酸、光学活性、インターロイキン6
  • 担当:食品機能性・生体防御利用技術
  • 代表連絡先:電話 029-838-8611
  • 研究所名:畜産草地研究所・畜産物研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

皮膚に対する紫外線B波(280-315nm)は主に表皮を構成する角化細胞に作用し、炎症反応を引き起こすことで組織にダメージを与える。抗酸化物質は活性酸素(ラジカル)を捕捉することにより、紫外線照射による過酸化物の産生を抑制し、角化細胞の炎症反応を抑制する。本研究は、乳酸菌が産生する抗酸化物質を、ジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)消去活性を指標に探索し、その構造を決定すると共に、乳酸菌L. plantarum が産生する抗酸化物質が、培養角化細胞の紫外線B波照射により引き起こされる炎症性サイトカインの産生を阻害するか検証したものである。

成果の内容・特徴

  • 乳酸菌L. plantarum が産生する抗酸化物質は、4−ヒドロキシフェニル乳酸(HPLA)、3−インドール乳酸(ILA)と同定される。同菌が産生する芳香族乳酸の光学活性はいずれもL体である(図1)。
  • ヒト株化角化細胞であるHaCaT細胞に紫外線B 波を60[mJ/cm2]の強度で照射した場合、4−ヒドロキシフェニル乳酸(最終濃度1-100μM)または3−インドール乳酸(最終濃度100μM)の培養液への添加により、炎症性サイトカイン(インターロイキン6)の産生が抑制される(図2)。
  • L体の4−ヒドロキシフェニル乳酸の炎症性サイトカイン産生抑制効果は、ラセミ体と同等であると認められる(図2)。

成果の活用面・留意点

  • インターロイキン6産生を抑制するためには、紫外線の照射前に4−ヒドロキシフェニル乳酸・3−インドール乳酸を培養液に添加する必要がある。
  • 最終濃度100μMまでの範囲内で、芳香族乳酸の細胞毒性は認められない。

具体的データ

図1~2

その他

  • 中課題名:生体防御作用に関する健康機能性解明と有効利用技術の開発
  • 中課題整理番号:310c0
  • 予算区分:交付金、先行的試行的研究課題
  • 研究期間:2011~2013 年度
  • 研究担当者:鈴木チセ、青木(吉田)綾子、高山喜晴、青木玲二、川澄俊之(日本女子大)、鈴木陽子(日本女子大)、小坂実沙(日本女子大)、市田佳澄(日本女子大)、新藤一敏(日本女子大)
  • 発表論文等:
    1) Suzuki Y. et al. (2013) Biosci. Biotechnol. Biochem. 77(6):1299-1302
    2) Aoki-Yoshida A. et al. (2013) Biosci. Biotechnol. Biochem. 77(8):1766-1768