ウシが経口摂取したアスタキサンチンの一部は体内に吸収される

要約

ウシにアスタキサンチン高含有酵母(ファフィア酵母)を含む補助飼料を給与すると、摂取したアスタキサンチンの約半分は糞中に排泄されるが、一部は消化管から吸収されて血液中に移行する。

  • キーワード:アスタキサンチン、ウシ、キサントフィル、抗酸化機能性物質
  • 担当:家畜生産・繁殖性向上
  • 代表連絡先:電話 029-838-8611
  • 研究所名:畜産草地研究所・家畜育種繁殖研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

近年の乳牛は、泌乳能力が飛躍的に向上した反面、代謝性疾患、繁殖障害、泌乳器病、蹄病など、生産病といわれる各種障害が増加している。その要因の一つとして、高泌乳化に伴う酸化ストレスの増大が挙げられる。強力な抗酸化力を有するアスタキサンチンは、酸化ストレスの改善に有効な資材であるが、ウシはアスタキサンチンなどのキサントフィル類をほとんど吸収できないとされていたことから、経口摂取したアスタキサンチンがどの程度吸収されるかを明らかにする。

成果の内容・特徴

  • アスタキサンチン高含有酵母(ファフィア酵母)33%(アスタキサンチンとして4,000mg/kg)を含む補助飼料マッシュまたはペレットを調製する。基材は米糠等一般的な飼料原料であれば何でも良い。
  • 補助飼料をポリエチレン内装紙袋に封入して暗所で半年間保存した場合のアスタキサンチンの残存率は、40°Cで約50%、25°Cで約70%、0°Cで約90%である。また、25°C及び0°Cで1年間保存した場合の残存率は、それぞれ約55%及び75%であり、マッシュとペレットの形状による違いはない(図1)。一方、補助飼料を高密度ナイロンフィルム内装紙袋に脱酸素剤とともに封入した場合の残存率は、暗所で40°C以下、3年以内なら、温度、期間、形状にかかわらず約90%である。
  • 泌乳牛に日量100g(アスタキサンチンとして400mg)の上記補助飼料ペレットを毎日給与すると、摂取したアスタキサンチンの約半量は糞中に排泄される(表1)。
  • 初妊の乳牛に分娩予定日の4週前から分娩後12週まで上記補助飼料ペレットを毎日給与し、給与後4時間前後の血漿中のアスタキサンチンを測定すると、分娩後1週以降有意な濃度上昇が認められる(図2)。一方、経産牛に同様の方法で給与・測定すると、泌乳期の血中濃度は初産牛より低めに推移する。

成果の活用面・留意点

  • ファフィア酵母含有補助飼料を給与することにより、ウシの体内において抗酸化作用等のアスタキサンチンの効果の発現を期待できる。
  • アスタキサンチンは失活しやすいので、調製した補助飼料が光、高温、酸素等に曝露しないよう保管に気をつけ、開封後は早めに給与する。

具体的データ

図1~2,表1

その他

  • 中課題名:受精・妊娠機構の解明と調節による雌牛の繁殖性向上技術の開発
  • 中課題整理番号:130b0
  • 予算区分:交付金、競争的資金(実用技術)、競争的資金(農食事業)
  • 研究期間:2009~2014年度
  • 研究担当者:平子 誠、鎌田八郎、近藤龍三郎(日産合成)、関根 禅(日産合成)、林 峰之(日産合成)、伊藤 稔(日産合成)、傍島英雄(岐阜畜研)、佐藤秀俊(宮城畜試)、伊藤 等(福島農総セ)、鬼澤直樹(茨城畜セ)、大澤 玲(埼玉農総研)、小林幸惠(静岡畜技研)、三角亮太(熊本農研セ)
  • 発表論文等:大澤ら(2014)日本胚移植学雑誌、36(3):149-155