閉鎖型コンテナ式離乳豚舎のエアロゾル濃度と空気中一般生菌数は相関する

要約

閉鎖型コンテナ式離乳豚舎のエアロゾル濃度と空気中一般生菌数に強い正の相関が認められることから、畜舎空気中微生物濃度の制御指標としてエアロゾル濃度を用いることが可能である。

  • キーワード:養豚、畜舎、エアロゾル、空気中微生物
  • 担当:家畜疾病防除・農場衛生管理システム
  • 代表連絡先:電話 029-838-8647
  • 研究所名:畜産草地研究所、環境工学研究グループ
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

養豚において死亡要因の7割を占める呼吸器病の原因となる病原微生物の多くは、直接接触に加え空気中を浮遊するエアロゾルに媒介され豚から豚へ伝播する。そこで、リアルタイム測定が可能であるエアロゾル濃度を指標とした畜舎空気中微生物濃度制御法の開発を目指し、閉鎖型コンテナ式離乳豚舎内のエアロゾル濃度と空気中微生物濃度の関連を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 約30日齢から約70日齢の離乳豚約120頭が収容可能である閉鎖型コンテナ式離乳豚舎(12 m×2.2 m×2.2 m)において、ハイボリュームエアサンプラーによりエアロゾル質量濃度を、パーティクルカウンターによりエアロゾル個数濃度を測定する。また、サイクロン式エアサンプラーを用いて空気検体を採取し、空気中の一般生菌数を測定すると共に、豚繁殖呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)遺伝子を検出する。
  • 空気中一般生菌数とエアロゾル質量濃度および粒子径5.0 μm以上のエアロゾル個数濃度には強い正の相関が認められる(r=0.85およびr=0.78、図1)。
  • 豚の導入後日数、活動状況および飼育頭数の変化に伴ってエアロゾル濃度と空気中一般生菌数は増減する(図2)。特に、隣接豚舎での豚移動に伴って豚の活動が活発であった豚導入後14-17日目ではエアロゾル質量濃度が最高8.3 mg/m3に達している。
  • 豚導入後17日目においてのみ、豚の口腔液および空気検体よりPRRSV遺伝子が検出されたことから、空気中の同ウイルス遺伝子は高エアロゾル濃度と関連して検出される可能性がある(図2)。
  • 暖房が行われる冬季(2-3月)には、夏季(9-10月)と比較して換気回数が約25%(1時間当たり11回)に減少した。それに伴い、畜舎内エアロゾル質量濃度と空気中一般生菌数はそれぞれ夏季に平均2.8 mg/m3および平均3.8万CFU/m3であったものが、冬期にはそれぞれ平均6.2 mg/m3(約2.2倍)および平均23万CFU/m3(約6.0倍)となり、換気回数が減少する冬期に上昇する傾向が認められる。

成果の活用面・留意点

  • 空気中一般生菌数とエアロゾル個数および質量濃度とに強い正の相関が認められることから、リアルタイム測定が可能なエアロゾル濃度を畜舎空気中微生物濃度の制御指標として用いることが可能である。
  • 病原ウイルス濃度とエアロゾル濃度との相関については、PRRSV以外の病原ウイルスも含めて今後より詳細に検討する必要がある。

具体的データ

図1

その他

  • 中課題名:農場の微生物汚染低減を目指した日本型家畜飼養システムの開発
  • 中課題整理番号:170d2
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2013~2015年度
  • 研究担当者:池口厚男(宇都宮大)、名出貴紀(宇都宮大)、中久保亮、石田三佳、宮﨑綾子、鈴木亨、鈴木孝子、髙木道浩
  • 発表論文等:名出ら(2015)農業施設、46(1):1-8