堆肥はスラリーより採草地の土壌炭素収支を改善する効果が大きい

要約

採草地で乳牛の堆肥またはスラリーと化学肥料を適切に併用すると、収量は同等であるが、土壌炭素の減少を抑制する効果は堆肥の方が大きい。炭素投入量はスラリーより堆肥の方が多く、炭素分解量はスラリーより堆肥の方が少ない。

  • キーワード:家畜排せつ物、採草地、スラリー、堆肥、土壌炭素収支
  • 担当:基盤的地域資源管理・農用地保全管理
  • 代表連絡先:電話 029-838-8647
  • 研究所名:畜産草地研究所・草地管理研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

採草地で乳牛の排せつ物を利用し、生産性維持と温室効果ガス抑制を両立できる管理法が求められている。しかし、処理が異なる排せつ物の施用が採草地の収量と土壌炭素収支に及ぼす影響については実測値が少ない。本研究は、乳牛の排せつ物からのカリウム(K)供給量を基に排せつ物を最大限に利用し化学肥料を適切に併用した採草地で、牧草の収量と土壌への炭素の投入量と分解量を測定し、乳牛の排せつ物の種類が、採草地の生産機能と土壌炭素収支に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。

成果の内容・特徴

  • スラリーまたは堆肥からの無機態窒素の供給量と化学肥料の和が210 kg-N ha−1 year−1となるよう化学肥料を補うことで、スラリー、堆肥のいずれを施用した場合も、収量は同等となる(図1a、b)。
  • スラリーからのK供給量を基にスラリーを最大限に利用すると、2年間でスラリーとして5.5 t-C ha−1 2 years−1の有機物が採草地に投入され、そのうち4.6 t-C ha−1 2 years−1(84%)が2年以内に分解したと推定される(図2a)。
  • 堆肥からのK供給量を基に堆肥を最大限に利用すると、2年間で堆肥として9.0 t-C ha−1 2 years−1の有機物が採草地に投入され、そのうち2.1 t-C ha−1 2 years−1(23%)が2年以内に分解したと推定される(図2a)。
  • 2年間で収穫残渣として1.0から1.1 t-C ha−1 2 years−1の有機物が採草地に投入され、そのうち0.7から0.8 t-C ha−1 2 years−1(68から70%)が2年以内に分解したと推定される(図2a)。
  • スラリー、堆肥、収穫残渣を除く土壌有機物の分解量は、2年間で8.2 t-C ha−1 2 years−1と推定される(図2a)。
  • 以上の結果から、乳牛の排せつ物を最大限に利用して牧草を生産すると、炭素投入量はスラリーより堆肥の方が多く、炭素分解量はスラリーより堆肥の方が少ないことが明らかである。排せつ物の種類によらず収量は同等であるが、堆肥はスラリーより採草地の土壌炭素の減少を抑制する効果が大きい(図2b)。

成果の活用面・留意点

  • 家畜排せつ物のリサイクル、肥料コストの削減、生産性の維持、温室効果ガス発生量の抑制を両立できる草地管理法を構築するための基礎情報となる。
  • 畜産草地研究所・那須研究拠点の採草地で、排せつ物から供給されるKが標準施肥量(200 kg-K2O ha−1 year−1)と同等になるよう、スラリー(66 t ha−1 year−1)または堆肥(37-39 t ha−1 year−1)を最大限に利用し化学肥料を適切に併用した場合の結果である。

具体的データ

図1

その他

  • 中課題名:農用地の生産機能の強化技術および保全管理技術の開発
  • 中課題整理番号:420b0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(気候変動)
  • 研究期間:2008~2015年度
  • 研究担当者:森昭憲、寳示戸雅之(北里大)
  • 発表論文等:Mori A. and Hojito M. (2015) Soil Sci. Plant Nutr. 61(4):736-746
法人番号 7050005005207