ランドサットデータの陰影情報を用いた地形図の歪みの補正

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要約

発展途上国の地形図には、地形図作成段階の作図ミスに由来する歪みが含まれている場合が少なくない。ランドサットデータの陰影情報を用いて、こうした地形図の作図時の歪みを簡便に除去するプログラムを開発した。

  • 担当:農業工学研究所・造構部・土木地質研究室、地域資源工学部・土地資源研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7671
  • 部会名:農業工学
  • 専門:資源・環境
  • 対象:防災技術
  • 分類:

背景

ランドサットデータは、地球の形状や衛星の姿勢、センサーの特性等に由来する系統的な幾何歪みをもつが、これらは適切な補正処理で除去することができる。一方、既存の地形図には、地形図作成段階の作図ミスに由来する歪みが含まれることがあるが、これらの歪みは局所的、非系統的で補正が困難である。特に発展途上国の地形図にはこうした歪みが含まれている場合が多く、GIS(地理情報システム)データベースを構築する際の障害になっている。
そこで、地形図の歪みを、比較的歪みの少ないランドサットデータを基図として除去するプログラムの開発を行った。

成果の内容・特徴

開発したプログラムは、ランドサット画像に含まれる地形の陰影情報と、地形図から作成される地形陰影のシミュレーション画像を対比させ、両者の位置のずれから地形図の歪みを補正するという手法に基づいている。地形図の歪み除去は、以下の手順で行う。

  • 既存の地形図(使用した地形図の縮尺は1/50,000)の等高線データをデジタイズして、-次数値地形モデル(DEM;Digital Elevation Model)を作成する。
  • 一次DEMから、ランドサットデータ撮像時の太陽高度の条件下で地形陰影図(図1)を作成する。
  • 幾何補正を施したランドサット画像を、色相(Hue)、彩度(Saturation)、明度(Intensity)の情報に分解するHSI変換を行い、明度の情報を濃淡画像(図2)として作成する。
  • 一次DEMの地形陰影図とランドサット濃淡画像の位置対応関係をテンプレートマッチングにより同定する。
  • 同定した対応点の位置ずれの情報から、1次DEMの歪み分布画像(図3)を作成する。
  • 歪み分布画像に基づいて1次DEMを幾何補正して修正DEMを作成する。
    最後に作成された修正DEMから、等高線図(図4)を復元すれば、歪み除去された地形図が作成される。なお、1~3の処理は各種GISソフトウェアで行い、開発したプログラムは4~6の処理に用いる。

成果の活用面・留意点

この手法は、尾根や谷筋を地表平面上で平行移動させて、位置ずれを補正するものであり、尾根の標高など高さ方向の歪みを補正することはできない。また、地形陰影の生じない平地での適用は対象としていない。

具体的データ

図1 地形図から作製した地形陰影図
図2 ランドサット画像から作成した明度画像
図3 対応点の変位ベクトル図
図4 幾何学補正後の等高線図

その他

  • 研究課題名:数値標高モデル生成手法の高度化に関する研究
  • 予算区分:経常(環境庁)
  • 研究期間:平成8年度(平成6~9年)
  • 研究担当者:上村健一郎, 奥山武彦, 長束 勇, 中里裕臣, 森 充広
  • 発表論文等:開発した手法・プログラムは、インターネット・ホームページに公開の予定