パイプライン呑口部のシール高の基準化

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要約

パイプライン呑口部における、自由水面からの空気吸込みを防止するシール高に関する、水理実験の相似性を検証した。これから得られた相似式を基に、口径3,000mmまで適用可能な呑口シール高の基準化を行った。

  • 担当:農業工学研究所 水工部 水路工水理研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7566
  • 部会名:農業工学
  • 専門:用排水
  • 対象:計画・設計技術
  • 分類:普及・行政

背景

パイプラインの大口径化,管内許容流速の見直しに伴い、最大許容流速V=2.5m/s,最大口径3,000mmまでの施設について、パイプライン呑口部の必要シール高を決める必要があるが、大口径の管を使用した検証は難しいため、模型実験によって求める。空気吸込み現象は、水面の大気圧と管水路の流れの圧力差によって発生する。このため、表面張力や粘性の影響を考慮して、フルード(Fr)則に多少の修正を加える必要がある。ポンプ吸込水槽の、吸い上げによる空気吸込渦の発生については模型試験例があるが、自然流下パイプラインの、水平流下に対する呑口部の空気吸込現象の模型実験例はない。このため、2種類の相似模型を使用して、パイプライン呑口部における空気吸込みの限界水深と管内流速の相似性を検証し、水理模型実験値を用いてシール高の基準化を行う。

成果の内容・特徴

  • 実験装置は図-1に示すように、口径を基準長として口径75mmと100mmの2種類の相似模型を製作した。これらの装置を使用して、パイプライン呑口部に空気を吸い始める管頂から水槽水面までの限界吸込水深hを実測した。
  • 流速をV(m/s),代表寸法をL(m),指数をnとし、模型に添字m,実物に添字pをつけると、模型比と流速比の相似関係は(1)式で表される。
    Vp/Vm=(Lp/Lm)n ・・・・・・・・・・・・・・ (1)
    フルード(Fr)則ではn=0.5,流速が一致(Vp=Vm)する場合にはn=0.0となる。本実験では図-2のように、指数n=0.2の時に模型比と流速比が一致する。
    日本機械学会がポンプ吸込水槽の模型実験法で提示している式とも一致しており、信頼度が高い。
  • 口径3,000mmまで適用する必要シール高について、実物大の管内流速2.5m/sに対する口径100mmの管内流速をn=0.2として(1)式で求め、図-2から口径比率を求めた。この値に余裕高500mmを考慮してシール高Sを求めると、表-1のとおりとなる。これを基準値とした。

成果の活用面・留意点

本相似式は、管水路呑口部の空気吸込み現象に適用可能である。
適用する実物水槽寸法は、ほぼ実験装置と幾何学的に相似(水槽長8D,水槽幅5D)であること。

具体的データ

図1 シール高(S)の概念図
図2 口径比率(h/D)と口径100mmの管内流速換算値
表1 パイプライン呑口部の必要シール高

その他

  • 研究課題名:パイプライン呑口シールに関する研究
  • 予算区分:経常・依頼
  • 研究期間:平成9年度
  • 研究担当者:相川泰夫,島崎昌彦,中 達雄
  • 発表論文等:相川泰夫,島崎昌彦,中達雄,松田貢一:パイプラインの呑口シール模型実験に適用する相似則の検証,平成9年度第48回農業土木学会関東支部大会講演,PP.101~103(1997)