断層付近の環境ガンマ線スペクトルの空間分布特性

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

存在が明らかな断層を横切る測線でガンマ線スペクトルのデータを収集した。その結果、214Bi/208Tl比の異常増加点位置は断層位置にほぼ一致していた。214Bi/208Tl比の異常点の前後では、214Biの変化は極大パターンを示し、208Tlと40Kの変化は極小・減少のパターンを示した。

  • 担当:農業工学研究所・地域資源工学部・地下水資源研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7200
  • 部会名:農業工学
  • 専門:資源利用・環境保全
  • 対象:現象解析技術
  • 分類:研究

背景

地熱開発において断層は地熱流体の通路として機能を有しており、地熱開発適地の選定に当たっては、最も重視される地質構造である。環境ガンマ線スペクトルを測定することにより、土壌表層(深度50cmまで)の238Uの娘核種であるBi、232Thの娘核種である208Tl、40Kの濃度(カウント)が測定できる。研究室では、環境ガンマ線の214Bi/208Tl比の異常増加点(平均値に対し20%以上の増加:以下、Bi/Tlの異常点)を指標として埋没断層を検出する手法の開発に取り組んできた。断層上でラドンが増加する例はすでに多く報告されているが、その他の放射能がどの様に分布しているかについて報告された例は少ない。存在が明らかな断層(図1):活断層(阿寺断層、網走湖東岸断層群中の断層、本宮断層)と非活動性断層(棚倉破砕帯の境界断層、山口県光市の断層)付近のガンマ線スペクトルのデータを収集し、断層付近の環境ガンマ線スペクトルの空間分布特性を明らかにした。

成果の内容・特徴

  • 断層の存在が明らかな地域でガンマ線スペクトルと土中のラドン濃度を測定した。
  • 図2に阿寺断層の測定例を示す。矢印は公表されている断層位置を示す。Bi/Tl異常は断層位置から20m離れて分布していた。そこでは、Biの微少な極大と、Tl、Kの減少が生じていた。
  • 断層付近(断層は砕帯)の環境ガンマ線の変動パターンを総括して表1に示す。表中にはBi/Tl異常の前後での核種の変動パターン、核種濃度が階段状に変化するパターンの有無、土中ラドンガス濃度の異常点の有無が示されている。表中の数字は、公表資料中に図示されていた断層位置と異常点、それぞれのパターンまでの距離である。
  • Bi/Tl異常点と断層位置の間の距離は0~30mであり、ほぼ一致していた。どの断層でもBi/Tl異常点の前後では、Biは微少な極大・増加を示した。Tl、Kは極小・減少のパターンを示した。断層付近には、核種濃度が階段状に変化することが多い。活断層の土中ラドン濃度は、断層から10~180m離れて分布していた。非活動性の断層では、検出されないか、検出される場合には断層線上に一致した。

成果の活用面・留意点

核種変動パターンの違いにより、断層付近でも全ガンマ線が減少したり、Bi/Tlの異常が検出されない場合がある。

具体的データ

表1 断層付近の環境ガンマ線スペクトルの変動パターン
図1 調査位置図
図2 阿寺断層を横切る側線の測定例

その他

  • 研究課題名:地熱資源賦存地帯における環境ガンマ線スペクトルの空間変動と時系列変動の実体解明
  • 予算区分:経常、依頼
  • 研究期間:平成10年度(平成8年~10年度)
  • 研究担当者:今泉眞之、濱田浩正、二平 聡
  • 発表論文等:今泉眞之・濱田浩正・奥山武彦(1998):地すべり地の亀裂構造と土中ラドン濃度の関係、第35回理工学における同位体元素研究発表会要旨集、38p.