回分式活性汚泥方式へのORPを用いた自動制御手法の適用による窒素除去

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

回分式活性汚泥方式による集落排水処理にORPを用いた自動制御手法を適用することにより、無駄なばっ気をすることなく、汚水中の窒素をほぼ完全に除去することが可能となった。

  • 担当:農業工学研究所・地域資源部・資源循環研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7508 Mail Address
  • 区分:技術及び行政
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

回分式活性汚泥方式は集落排水処理方式の一つであり、単一の槽により各処理を行うため、沈殿槽施設が不要であること、BOD除去と同時に窒素について除去が可能であることなどの利点がある。しかし、1サイクルに占めるばっ気、非ばっ気の工程時間設定は、人が処理状況を監視しながら行わなければならないという欠点があった。

本研究では、回分式活性汚泥方式において、汚水を用いて窒素除去に最適な処理工程の制御試験を行い、ORP(酸化還元電位)を用いた自動制御技術を確立する。

成果の内容・特徴

  • 実証試験に用いた回分式活性汚泥方式実験装置は(ばっ気槽:直径50cm、高さ80cm、回分槽容量約157L、MLSS2,600~3,700mg/l)であり、1サイクルでは、容量の1/4(約39L)を処理した(図1)。1サイクルの工程及び主な制御は、汚水流入→ばっ気(DO定値制御およびORP制御によるばっ気停止)→攪拌(ORP制御による撹拌停止)→沈殿(時間設定と光センサーによる沈殿工程終了)→処理水排水であり、一回の連続ばっ気工程と、一回の連続した撹拌工程が特徴的な工程である。
  • 自動制御手法の主な特徴は、ばっ気工程において、DO値(溶存酸素濃度)を一定値(2.0mg/l)に制御した場合、硝化(アンモニアの亜硝酸、硝酸態への変化)の完了時にORP曲線が横ばいになる点(屈曲点 P1)を検出してばっ気を終了することと、脱窒(硝酸、亜硝酸態の窒素が窒素ガスとなる過程)が完了した時に現れる屈曲点(P2)を検出して攪拌工程を終了し沈殿工程に移ることである。(図2)
  • ORPを用いた自動制御手法が、汚水を用いた回分式活性汚泥方式においても屈曲点P1、P2を検知し、高い窒素除去が可能なことが示された。また処理時間においても1日あたり4サイクルの処理が可能だったこと、数日間の連続自動運転においても安定した処理性能を発揮することがわかった。水質結果例(表1)。

普及のための参考情報

本研究により、ORPを用いた自動制御手法が、汚水を用いた回分式活性汚泥方式において十分に適用し、高い窒素除去性能を持つことが示された。これにより実施設への適用に向けた取り組みの可能性が示された。

具体的データ

図1 自動制御実験装置概要
表1 汚水・処理水の水質(mg/l)と除去率
図2 自動制御時のORP・DO・水質成分の変化

その他

  • 研究課題課題名:集落排水処理のORPを用いた自動制御によるエネルギー削減効果の評価
  • 中期計画大課題名:有機物循環利用のための処理技術及び自然エネルギー利用技術の開発
  • 予算区分:交付金研究
  • 研究期間:2001~2002年度
  • 研究担当者:本間新哉、端憲二
  • 発表論文等:1)本間新哉、端憲二、柚山義人、金瀅中、屈曲点検出による硝化完了時点の検出とこれを用いたばっ気の自動制御 農工成果情報、11-12、2001
                      2)本間新哉、端憲二、回分式活性汚泥方式におけるORP屈曲点の検出、H13.農土学会講要746-747、2001
                      3)上田達己、端憲二、膜分離活性汚泥法による大腸菌ファージの除去 農工成果情報、7-8、2001