農業環境指標による多面的な農村の地域診断のための汎用ソフト

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要約

農村の現状を多面的にとらえるために、主成分分析手法を用いた地域診断手法を用いて、全国の地域診断を容易に行える汎用ソフトを開発した。この手法は、当該地区の経済活力、農業活力、自然環境度を全国平均値に対してどのような位置にあるかを簡易に評価することができる。

  • 担当:農業工学研究所・農地整備部・畑整備研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7553 Mail Address
  • 区分:技術及び行政
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

一般に、暗渠の吸水管を埋戻す際には、疎水材を埋設してから土による埋戻しを実施することが多い。その際に用いる疎水材は、安価に入手できる資源を活用することが多く、地区毎に多様な疎水材が使用されている。また、埋め戻し土の厚さも、施工方法などの条件により様々である。しかし、従来、その水理的妥当性については、ほとんど検討されてこなかった。そこで本研究では、2次元非定常飽和不飽和FEM浸透流解析を行い、暗渠疎水材の透水性および埋め戻し土の厚さが、暗渠排水能力におよぼす影響の解明を試みた。

成果の内容・特徴

  • モデルに用いた29個の指標を表-1に示す。これらの指標は地域活力度図鑑(農林水産長期金融協会)、日本河川水質年鑑(国土交通省)、環境保全機能に関する類型化研究(農工研)の成果をもとにしたものである。
  • 1990年を基準年とし、主成分分析の寄与率の大小から農業活力、経済活力及び自然環 境度と位置付けられる三次元の評価手法を開発した。全国市町村の平均値をゼロとして 設定し、主成分分析の説明力を示す累積寄与率は60.1%であるが、この手法の有効性は 既に公表している1)参照。
  • 水質に係わる7指標(その他の22指標は、市町村単位にデータベースとしてソフトにに入力済み)について地区を代表する値を入力することで算定が可能となる(表-1)。
  • 農業の生産性(指標1から8)や自然環境の度合(指標18から24)を表す数値について改善目標値を入力する(例えば1戸当たり経営耕地面積、SS(mg/l)浮遊物質量等)ことで事業実施による効果を事前に推定できる方法となっている(表1)。
  • 算定フローチャートを図1に示した。当該ソフトは、一般的なOS(Microsoft Windows)で起動でき、Microsoft Excelのマクロ機能を利用して、計画 担当者が操作、解析ができ、算定結果は可視化されており、判定においても容易である(図2 算定画面図参照)。容量も1枚のフロッピーディスクに収まる利便性の高い内容となっている。
  • 図3に診断結果の一例を示した。この例では複数市町村にまたがる国営灌漑排水事業 地区を3例あげている。各地区の現状が全国平均値と比較して評価できる

普及のための参考情報

  • 最小単位は市町村である。
  • 今後生物多様性に関するデータや2000年の値の入力等 により、より幅の広い視点からの地区の現状診断に拡張する必要がある。

具体的データ

図1 算定のフローチャート
表1 地域診断モデルに用いた29指標
図2 モデルの算定画面(開始時)
図3 国営3地区の事例

その他

  • 研究課題課題名:農業環境指標による畑地帯の地域診断手法の開発と予測手法の解明
  • 中期計画大課題名:農村活性化のための施設資源の評価手法の開発と農業農村整備等の波及効果の解明
  • 予算区分:交付金研究
  • 研究期間:1999~2001年度
  • 研究担当者:凌 祥之、瀬戸口洋一(鹿児島県)、小泉 健、山岡 賢、齋藤孝則
  • 発表論文等:1)Koizumi T.,Abe Y.(Tsukuba University),Yoshida H.,Proposal of a regional evaluation method for upland field cases, Trans.JSIDRE, 45-55, 1999
                      2)小泉健、これまでの技術者育成と今後の方向、農土誌、69(7)、37- 42 2001.
                      3)小泉健、凌 祥之、瀬戸口洋一、修復すべき「水と土」の定義と技術の展開方向、農土誌、70(7)、掲載予定、2002.