農業用パイプラインの多節屈折管の局所損失係数の計測

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要約

多節屈折管を有するパイプラインの実験において、整流区間を屈折部下流側に30D以上確保して流れの動水位を正確に測定した。この方法により、農業用パイプラインの管材に適した局所損失係数を計測し、その値がレイノルズ数と相対粗度の関数であることを確認した。

  • 担当:農業工学研究所・水工部・水路工水理研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7566 Mail Address
  • 区分:技術及び行政
  • 分類:参考

背景・ねらい

農業用パイプラインの配管では、道路下埋設やポンプ場建設等において屈折管を多用しているため、流れの全損失水頭に占める局所形状損失の割合は小さくない。従来、多節屈折管の局所損失係数の測定はH.Kirchbach(1928)とW.Schubart(1929)によって小口径管路(口径43mm)の模型を使用して計測されていた。そこで、比較的口径の大きい内径204.7mm(呼び径200A)の90°と45°の多節屈折管(JIS G 3451「水道用塗装鋼管の異形管」)を用いた水理実験(図1、表1)によって局所損失係数を計測し、大口径管路への適用性について検討することを目的とした。

成果の内容・特徴

  • 実験に先立ち、呼び径80A、100A、150Aおよび200Aの4種類の管径において、マノメータを屈折管の上下流に50cm間隔で約20点設置することによって動水位差を測定し(図2)、整流区間として確保すべき距離を判定した。整流区間として、90°と45°の場合、多節屈折管の中心から上流側に5D(D:管口径)以上、下流側に30D以上を設けることが必要であることを明らかにした。
  • 多節屈折管の局所損失係数はレイノルズ数の関数であることを追認した。これは多節屈折管の局所損失係数が単に形状のみによる影響ではなく、管壁の摩擦による流れの乱れの影響を受けることを示している(図3)。
  • 従来実験値との比較により、多節屈折管の局所損失係数は、相対粗度の関数でもあることを確認した(表2)。したがって、現場の大口径管の局所損失係数は本測定結果よりもさらに小さくなると予想される。

普及のための参考情報

留意点:本実験の条件範囲において、計測した多節屈折管の局所損失係数の値は、設計基準・技術書(農林水産省、1998)に記載されている粗い管の場合についての値(参考値)に対して3分の2程度であった。

具体的データ

図1 実験装置の全体配管図
表1 実験用の多節屈折管の寸法
図2 局所損失水頭の算出方法
表2 従来の局所損失係数の値との比較
図3 局所損失係数とRe数の関係

その他

  • 関連する中期計画大課題名:パイプラインの維持管理技術の開発
  • 予算区分:その他(受託)
  • 研究期間:1999~2001年度
  • 研究担当者:田中良和、島武男、中達雄
  • 発表論文等:1)田中良和・向井章恵・中達雄、管路の屈折損失係数の測定、平成13年度農業土木学会応用水理部会講演集、9-12、2001.
                      2)馬籠剛一・田中良和・中達雄、曲がり損失係数の測定、平成13年度農業土木学会関東支部大会講演要旨集、97-99、2001.