NPOによる流域圏環境管理の実態とパートナーシップ

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要約

流域圏環境管理に関わるNPOは、1990年以降に活動を開始した団体が大半で、活動内容は活動開始時期によって異なる。また、連携相手としては市区町村役場が最も多く、パートナーシップの活発さと財政規模には強い関係がある。

  • 担当:(独)農業工学研究所・農村計画部・地域計画研究室
  • 代表連絡先:029-838-7549 Mail Address
  • 区分:技術及び行政
  • 分類:参考

背景

都市周辺地域(下流域)では混住化によって、中山間地域(上流域)では過疎化や高齢化によって地域社会組織の機能が低下し、河川や水利施設、棚田や里山などの流域圏環境の管理を地域住民だけでは十分に行うことができず、流域圏環境が荒廃するケースが生じている。一方近年では、NPO等が流域圏環境の管理を行う先駆的なケースも各地で誕生しており、流域圏環境管理の新たな担い手として期待が高まっている。本研究では、流域圏環境管理に関わるNPOを対象にアンケートを実施し、その実態を明らかにした。

成果の内容・特徴

アンケートは、日本NPOセンター「NPO法人データベース(2002年6月時点)」から抽出した270団体(認証団体)に郵送し、123団体(46%)から回答を得た。結果は以下のとおりである。

  • 1990年以降に活動を開始した団体が大半で、半数近くの団体が特定非営利活動促進法施行(1999年)以降に活動を開始している(図1)。
  • 1999年以降に活動を開始した団体の活動内容は、「環境教育や啓発」が最も多いのに対して、1998年以前から活動を開始している団体の活動内容は、「水辺環境の保全管理」、「生態系の保全管理」も同程度に多いなど、活動開始時期によって活動内容は異なる(図2)。
  • NPOの連携相手としては市区町村役場と他のNPOが多く、国・都道府県の機関、民間企業がそれにつづく(図3)。また、パートナーシップの活発さと財政規模には強い関係がある。
  • 他のNPOとはノウハウ・情報面での連携が多く(図4)、民間企業とは資金面での連携が多い等(図5)、パートナーによって連携内容は異なる。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、自然再生推進法関連の事業など、流域圏環境管理に関わる行政施策を検討する上での基礎資料となる。
  • 対象としたNPOは、法人格をもつ認証団体に限定されている。非認証団体の実態は反映されてない点には留意されたい。

具体的データ

図1 活動開始年
                                                       図1 活動開始年

図2 活動開始年と活動内容
                                                       図2 活動開始年と活動内容

図3 財政規模と連携相手
                                                       図3 財政規模と連携相手

図4 他のNPOとの連携内容
                                                       図4 他のNPOとの連携内容

図5 民間企業との連携内容
                                                       図5 民間企業との連携内容

その他

  • 研究課題名:新たな流域圏環境管理方式の解明と支援手法の開発
  • 中期計画大課題名:農業・農村及び事業における多面的機能の評価手法の開発
  • 予算区分:委託プロ(自然共生)
  • 研究期間:2002~2006年度
  • 研究担当者:福与徳文・八木洋憲・筒井義冨・三橋伸夫(宇大)・鎌田元弘(千工大)
  • 発表論文等:1)福与徳文:農村地域環境管理におけるNPOの役割、農業土木学会第8回中央研究集会資料、87-96
                      2)福与徳文・八木洋憲・筒井義冨・三橋伸夫・鎌田元弘:NPOによる流域圏環境管理の実態とパートナーシップ、農村計画学会2003年度春期大会報告