歴史的利水技術の有する教育機能に着目した都市農村交流

要約

三連水車など古くから伝わる利水技術の有する教育機能は、地域住民や生徒など情報の受け手がインタビュー、実験やワークショップなどを通じて利水技術を体験することで発揮される。教育機能の発掘、発信に送り手と受け手が相互に協力・参加することにより都市と農村の交流が促進される。

  • キーワード:歴史的利水技術、教育機能、都市農村交流、アクションプラン
  • 担当:農工研・施設資源部・水源施設水理研究室
  • 連絡先:電話029-838-7563、電子メールgriese@affrc.go.jp
  • 区分:農村工学
  • 分類:研究 参考

背景・ねらい

福岡県朝倉市の三連水車、千葉県市原市の西広板羽目堰のような古くから伝わる利水技術は、先人の知恵、農業の大切さ、環境との共生などの教育機能を有している。そこで本研究では、学校での取り組みの調査やイベント来場者へのインタビューを通じて、これら教育機能を発掘方法と発信方法の両面から捉えて、それぞれの方法を明らかにするとともに、教育機能を有効に活用することによって都市と農村の交流を促進させるアクションプランを作成する。

成果の内容・特徴

  • 歴史的利水技術を高く評価する研究者、歴史家、郷土史家などによって歴史的利水技術は歴史、文化、人物、技術、景観などを「切り口」として、先人の知恵、農業の大切さなどの機能が「抽出」され、受け手である市民や児童に伝えられてきた。今回の調査によって、受け手となる住民や児童へのインタビュー、実験などを通じて、教育機能の「切り口」や「抽出方法」への受け手の参加が教育機能の発掘に有効であることが明らかになった(図1)。
  • 展示館や資料館など従来の送り手が主体の教育機能の発信では、受け手にとっては、見たり、触れたり、感じたり、考えたりできず、その教育機能を十分に享受しにくい。そこで、展示会、イベントやネットなどの「場」において、ワークショップ、実験、インタビューや疑似体験などの「ツール」で、参加者(受け手)が主体的に見たり、話したり、感じたり、考えたりする「行為」のできる仕掛けを設置することが重要である。そして教育機能の発信を送り手と受け手が相互に協力し合いながら行うことによって、歴史的利水技術の学習、保存、広報、交流といった「行動」が導かれる(図2)。
  • アクションプランは、機能の抽出、機能の体験、行動の3段階から構成される。機能の抽出には、歴史家、農家だけでなく受け手となる生徒や市民などの参加が重要である。機能の体験では、送り手と受け手の参加だけでなく、中間的受け手(たとえば、送り手:学校、受け手:生徒の場合は親)も参加させることが重要である。このような体験が、歴史的利水技術の学習、保存、広報、交流といった行動を導き出すこととなる。この行動段階において、体験・行為の実践のチェックや見直し、さらには新たな教育機能の摘出といったフィードバックを行うことによって、活動の広がりと定着が図られる。

成果の活用面・留意点

歴史的利水施設に対して市民や生徒など受け手が何を感じているのか、何を求めているのか、送り手の立場だけでなく受け手の立場も考慮してインタビュー・調査することが重要である。

具体的データ

図1 教育機能の発掘方法

図2 教育機能の発信方法

図3 アクションプラン

その他

  • 研究中課題名:農村地域の活力向上のための地域マネジメント手法の開発
  • 実施課題名:歴史的な利水技術が有する教育機能の評価手法の開発
  • 課題ID:413-a-00-004-00-I-06-7410
  • 予算区分:交付金プロ(ソフト機能)
  • 研究期間:2004~2006年度
  • 研究担当者:後藤眞宏、筒井義冨、齊藤雪彦(千葉大学)、浪平 篤、常住直人
  • 発表論文等:小林宏康・高木強治・浪平篤・常住直人・後藤眞宏,西広板羽目堰における伝統工法・技術の評価,
                      農業工学研究所技報,204,pp.253-262,2006