農業用フィルダムの長期浸透及び変形挙動

要約

湛水後10年以上が経過した農業用フィルダムの浸透量及び変形量の浸透量及び変形量の時間的な収束傾向について検討したところ、浸透量及び沈下量はほぼ湛水開始から5~10年程度で安定化する。

  • キーワード:農業用ダム、性能、構造、劣化、指標
  • 担当:農工研・施設資源部・構造研究室
  • 連絡先:電話029-838-7571、電子メールkohgo@affrc.go.jp
  • 区分:農村工学
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

農業用フィルダムの重要な性能指標である浸透性及び変形性に対して維持管理上の限界値を設定することができれば、ダムの維持管理を合理的に行うことができる。一般にフィルダムの浸透量及び変形は経時的に安定化すると言われているが、その時間的変化の傾向を定量的に検証した事例は極めて少ない。本研究では、湛水後10年以上が経過したフィルダムを対象に浸透量及び変形量の挙動観測データの比較を行い、浸透量及び変形量の時間的な収束傾向について整理し、維持管理上の限界値について検討する。

成果の内容・特徴

  • ダムの浸透性及び変形が時間的に安定化すると仮定すれば、湛水試験後に一定期間のモニタリングを行うことで管理上の目安値を設定することが可能と仮定した(図1)。
  • 浸透水量7ダム,変形3ダムを対象に経時的な挙動の比較・検討を行った。対象ダムを表1に示す。
  • 7ダムの湛水開始からの総浸透水量(基本的には堤体下流法尻に締め切り堰を設け,ドレーンにより締め切り堰に導かれた浸透水の流量を計測、コア及び基礎浸透水量と降雨、融雪の地表水の合計と想定される)の経時変化グラフを図2に示す。積雪がある北陸以北のダム(A~D)では3~4月にスパイク状に浸透水量が急増する現象が見られたが、平均的にはすべてのダムで総浸透水量は湛水開始からほぼ横ばいあるいは漸次減少の傾向が観察された。
  • 農水関係3ダム及び国交省関係のダムにおける圧縮率(%)=(堤頂における沈下量/堤高)×100の経時的変化グラフを図3に示す。時間原点は盛土完了時にほぼ相当する。図からダムの堤高によって値に差はあるが、ロックフィル型(CC)及びアースフィル型(EF)のダムでは、盛立て完了からほぼ5~10年で堤体の沈下量は収束する傾向にあった。
  • 図4はダム中央部分の沈下コンターの経年変化(1年ごと)を示す。堤体の沈下量が大きい(青色になるほど沈下傾向が大きい)のはダムの中央部の盛土厚が大きな領域であることがわかる。
  • 以上の結果から、農業用フィルダムの浸透量及び沈下量の目安値を得るための計測期間としては湛水開始から5~10年程度が適当であると考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 湛水から10年以上経過したダムの維持管理の資料として活用できる。

具体的データ

図1 浸透水及び変形挙動の安定化と管理上位の目安値の関係表1 対象ダムの諸元

図2 総浸透水量の経時的変化

図3 圧縮率の経時的変化

図4 沈下コンターの経時的変化(A ダム)

その他

  • 研究中課題名:地域防災力強化のための農業用施設等の災害予防と減災技術の開発
  • 実施課題名:農業用フィルダムの構造的安全機能診断法の開発
  • 課題ID:412-c-00-001-00-I-06-6101
  • 予算区分:交付金プロ(施設機能)
  • 研究期間:2004~2006年度
  • 研究担当者:浅野勇、向後雄二、林田洋一
  • 発表論文等:浅野、向後、林田(2006)、フィルダムの長期浸透及び変形挙動について、
                       第41回地盤工学研究発表会講演集,pp.1269-1270