他出子弟の帰省・農作業手伝い行動の実態とその要因

要約

他出子弟の帰省・農作業手伝い行動に影響をあたえる要因には,実家世帯の家族構成・労働力の状況,他出子弟の世帯主との続柄,他出子弟の居住地からふるさとまでの距離等がある。他出子弟のライフステージとの関係では,帰省頻度は30~34歳の年齢階層でもっとも高く,一方で農作業手伝いの実施率は40~44歳の年齢階層でもっとも高い。

  • キーワード:他出子弟、帰省、農作業手伝い
  • 担当:農工研・農村計画部・地域計画研究室
  • 連絡先:電話029-838-7549、電子メールtashida@affrc.go.jp
  • 区分:農村工学
  • 分類:技術及び行政 参考

背景・ねらい

農村の過疎・高齢化を背景として,農山村地域の活性化ツールとして都市農村交流の取り組みが全国的な広がりをみせている。これらの多くは,一般都市住民を農村地域資源という商品の顧客対象として想定している。一方で,農村から他出した農家子弟のふるさととの交流(帰省・農作業手伝い・祭りへの参加など)も,広義の都市農村交流に含まれるものと考えられるが,その機能についてはあまり注目されていない。彼らは地域活性化・地域農業維持という目的に対しては,むしろ重要な主体として位置づけられる。
そこで,過疎・高齢化が進行している北関東中山間地域を事例地域としたアンケート調査により,他出子弟の帰省・農作業手伝い行動の実態とその要因を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 過疎・高齢化が進展している茨城県中山間地域のM農協管内において,組合員(4,617世帯)を対象としたアンケート調査を行った(回収有効調査票割合:36%)。
  • 事例地域の他出子弟の4人に3人以上(77%)が年3回以上帰省し,彼らの4人に1人以上(27%)が実家の農作業手伝いを実施している。なお彼らの大半は,ふるさとから比較的近隣のエリアに居住している(図4)。
  • 実家世帯の家族構成・労働力の状況が他出子弟の帰省・農作業手伝い行動に影響をあたえている。高齢世帯(60歳未満の同居世帯員がいない世帯)の他出子弟の帰省頻度・農作業手伝いの実施率は,非高齢世帯の他出子弟の帰省頻度・農作業手伝い実施率より高い(図1)。
  • 世帯主との続柄が他出子弟の帰省・農作業手伝い行動に影響をあたえている。世帯主との血縁関係が強いほど,他出子弟の帰省頻度,農作業手伝い率が高い(図2)。
  • 他出子弟のライフステージは他出子弟の帰省・農作業手伝い行動に影響を与えている。他出子弟の年齢により,帰省頻度ならびに農作業手伝い実施率は大きく異なる。帰省頻度がもっとも高い年齢は30歳代前半であり,農作業手伝いの実施率がもっとも高い年齢は40歳代前半である。他出子弟の結婚は帰省回数の増加契機となり,その後親の加齢により実家の農作業手伝いへの関与を強める,という解釈ができる(図3)。
  • 他出子弟の居住地からふるさとまでの距離は,他出子弟の帰省・農作業手伝い行動の制約要因となっている。一定距離までは影響が小さいが,それを超えると,他出子弟の帰省・農作業手伝い行動は大幅に減少する(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果が明らかにした他出子弟の帰省・農作業手伝いの実態は,他出子弟が農村活性化の主体となりうることを示し,農村活性化施策の立案における参考資料となる。

具体的データ

図1 高齢世帯の他出子弟の帰省・農作業手伝い図3 他出子弟の年齢と帰省・農作業手伝い

図2 直系・傍系、直系続柄と帰省・農作業手伝い図4 他出子弟の居住地と帰省・農作業手伝い

その他

  • 研究中課題名:農村地域の活力向上のための地域マネジメント手法の開発
  • 実施課題名:農村他出子弟の農村地域資源保全への参与条件に関する研究
  • 課題ID:413-a-00-003-00-I-06-7307
  • 予算区分:科研費
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:芦田敏文,八木洋憲,福与徳文
  • 発表論文等:1)芦田(2006)、他出子弟のふるさとへの関与実態と地域農業維持に果たす役割
                       -北関東中山間地域農村を対象として-、農村計画学会誌、25巻論文特集号、pp.473-478.