琉球石灰岩帯水層における浸透水の挙動特性

要約

琉球石灰岩帯水層においては、豪雨時に浸透水が短時間で地下水面に達するかん養経路が存在し、地下水中の溶存物質濃度を低下させる。地表からの浸透水は帯水層内で地下水と混合した後水平方向に流動する。

  • キーワード:トリチウム、硝酸態窒素、琉球石灰岩、地下水、地下ダム
  • 担当:農工研・企画管理部・業務推進室
  • 連絡先:電話029-838-7675
  • 区分:農村工学
  • 分類:技術及び行政・参考

背景・ねらい

沖縄県及び鹿児島県の琉球石灰岩地域においては、農業用水確保のため地下ダムが建設されている。このような地域における地下水中 の硝酸態窒素濃度は、飲料水基準値(10mg/l)以下ではあるが高い値を示している。地下ダム事業等で水質を保全しつつ、地下水を有効に利用していくた めには、負荷源と地下水質との関係を明らかにする必要があるが、帯水層は透水性が高く、亀裂や溶食が発達しているので、浸透水の帯水層内での挙動(浸透水 と地下水の混合状態・降雨イベント時の水質変動)は一般的な浸透理論で説明できない場合が多い。このため、琉球石灰岩帯水層が分布する沖縄県宮古島内の観 測井戸において深度5m毎の地下水中のトリチウム濃度、水質測定等を行い、降雨による水質の変化、島内の負荷源の推移と地下水中の硝酸態窒素濃度の対比に より、浸透水の挙動特性を解明する。

成果の内容・特徴

  • 宮古島東部白川田水盆内の浸透水は地下水と混合した後、水平方向に流動している。流域内2箇所の観測孔における地下水のトリチウム濃度の鉛直方向の変化が小さいことは,地下水の滞留時間が深度によらず一定で,よく混合されていることを示す(図1)。2孔のトリチウム濃度平均値の差から求められる地下水の水平流速は900m/年である。
  • 砂川地下ダム流域内においても、地表から琉球石灰岩を浸透して地下水面に達した水は鉛直方向に浸透し、特定の硝酸態窒素濃度 の領域を形成した後、水平方向に流動している。流域内観測孔11箇所において深度毎に採取した地下水の水質分析結果(延べ66点)によると、地下水中の硝 酸態窒素濃度は深度による変化は小さく、水平方向の濃度差は大きい(図2)。
  • 豪雨(台風通過)時には、硝酸態窒素濃度の著しい希釈が生じる。地下ダム流域上流部では台風通過後1ヶ月以内に濃度の低下が見られ、中流部・下流部では1ヶ月程遅れて濃度が低下する(図3)。また、地下水中の硝酸態窒素濃度は、島内の負荷源(例:サトウキビの栽培面積)と高い相関を持つ(図4)。
  • 琉球石灰岩地域の地下水質分布を再現し将来予測を行うためには、地下水面に達した硝酸態窒素等の負荷は鉛直方向に完全混合すること、降雨 →溶脱→地下水汚染という経路以外に、豪雨時に濃度の希釈を生じさせるような速い浸透をもたらすかん養経路が存在することを考慮する必要がある。

成果の活用面・留意点

  • 本研究成果は琉球石灰岩地域の地下ダム事業における水質保全施策策定のための、地下水流動モデル構築への活用が期待される。
  • 速い浸透をもたらすかん養経路が浸透量全体にどの程度寄与するかは明らかにされていない。降雨と地下水質との関係をより詳細に把握するため、浸透試験等を実施することが望ましい。

具体的データ

図1 宮古島東部白川田水盆におけるトリチウム濃度測定結果

図2 宮古島南部砂川地下ダム流域における硝酸態窒素濃度分布断面(2003)

図3 豪雨時の硝酸態窒素濃度変化

図4 サトウキビ栽培面積と硝酸態窒素濃度窒素濃度

その他

  • 研究課題名:農村地域における健全な水循環系の保全管理技術の開発
  • 実施課題名:地下ダム流域の空洞性石灰岩中の水・溶質動態の解明
  • 課題ID:421-a-00-003-00-I-07-8301
  • 予算区分:交付金研究
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:石田 聡,今泉眞之,土原健雄,吉本周平
  • 発表論文等:

    1)Satoshi ISHIDA et al.(2006)Fluctuation of NO3-N in Groundwater of the Reservoir of the Sunagawa Subsurface Dam, Miyako Island, Japan,PADDY AND WATER ENVIRONMENT,4(2):101-110
    2)石田 聡(2007)地下水流動制御施設設計のための地盤の不均質性の解明に関する研究,農村工学研究所報告,46:1-48