排水不良農地におけるほ場面傾斜化による表面排水及び流末処理技術

要約

大雨時に甚大な湛水被害が発生する露地野菜畑において、レーザーレベラーを用いたほ場面傾斜化による表面排水の迅速化と排水の流末処理技術は、迅速な土壌水分の低下を可能とし、高品位で安定した生産に寄与する。

  • キーワード:露地野菜畑、湛水被害、湿害、表面排水、ほ場面傾斜化、流末処理
  • 担当:農工研・農村総合研究部・水田汎用化システム研究チーム
  • 連絡先:電話029-838-7555
  • 区分:農村工学
  • 分類:技術及び行政・参考

背景・ねらい

畑地において、台風や長雨に伴う湿害を軽減するうえで、表面水の迅速な排除が重要であるが、ほ場面の窪みに起因して湛水が発生し ている。また、既存畑の多くは水田と異なり、地区外へ降雨を速やかに排除するための排水路が整備されていない。このため、湿害で収穫皆無となる事態も発生 していることから、大規模農家を中心に普及してきているレーザーレベラーを用いて、営農レベルにおいて表面排水促進と排水の流末処理を低コストで実現する 技術を検証する。

成果の内容・特徴

  • ネギやレタス等の露地野菜地帯である茨城県南西部猿島台地の既存畑は、黒ボク土壌のため、ほ場面が風食や長年の営農に伴いた るみ、また、排水路を兼ねる周辺道路面より低下して、表面排水が困難な状態にある。そこで、レーザーで制御するプラウとレベラーを用いてほ場面の緩傾斜化 (傾斜度1/233)を図り、これに伴って低位部に流下した排水を処理する排水溝(深さ1m×幅1m)を油圧ショベルで掘削する(図1)。
  • 傾斜化ほ場(70×30m区画)及び隣接の対照ほ場(無対策:45×30m区画)において、降雨に伴う排水状況を調査する(図2)。対照ほ場は41時間に及ぶ湛水がほ場全面で発生するが、傾斜化ほ場は表面排水が集中する下位部(排水溝側)において、4時間湛水したが降雨後は迅速に排除され、土壌水分も速やかに低下する。
  • 降雨後の地表層(0~20cm)の地耐力は、対照ほ場では10日経過してもトラクタの走行に必要とされる0.4MPa以下であるが、傾斜化ほ場は5日後に回復する(図3)。
  • 秋レタス(2007年)栽培期間中、台風や100mmを超える降雨はなかったが、傾斜化ほ場の収量は、一部湿害が発生した対照ほ場の1,393玉/10aに対し、1.15倍の1,608玉/10aとなる(表1)。また、重量は1.3倍となり、品質も良く、ほ場内のバラツキも少ない。

成果の活用面・留意点

  • 湛水被害及び湿害を回避し、地耐力の迅速な回復によって適期作業を可能とし、高品位で安定的な生産に寄与する。
  • 農家自らが行う簡易な排水改良技術として活用できる。また、補助事業での活用が検討されている。
  • 簡易排水溝は排水路などの排水施設がない場合に利用する。また、降雨浸食等で土砂の流入や崩壊が発生し、機能低下の恐れがあるため、緑化帯や集水渠を設置して、ほ場からの表土の流出を防止する必要がある。
  • 簡易排水溝に流出土砂が堆積し、機能低下を生じた際には掘削し農地に還元する。
  • 傾斜度は1/1000以上で排水促進効果が発現するため、現状のほ場面高を考慮して、極力扱い土量が少ない傾斜度で傾斜・均平化を図る。

具体的データ

図1 表面排水及び流末処理技術の概要

 

図2 降雨に伴う排水状況

 

図3 降雨後の地耐力

 

表1 秋レタスの収量と品質(2007)

 

その他

  • 研究課題名:田畑輪作に対応した生産基盤整備技術の開発
  • 実施課題名:表面・地中排水促進技術および流末処理技術の確立
  • 課題ID:211-l-00-002-00-I-07-1301
  • 予算区分:競争的資金 高度化事業(降雨リスク軽減)
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:若杉晃介、藤森新作
  • 発表論文等:
    1) 若杉晃介、藤森新作(2006)転換畑の圃場面傾斜化による排水・灌漑促進効果、農村工学研究所技報、204:185-194
    2)若杉晃介、藤森新作(2007)茨城県坂東市長須地区における畑地の表面排水促進および流末処理技術の開発、農土学会関東支部講演要旨:103-104