生活インフラとソーシャルキャピタルの効果評価のためのウェブアプリケーション

要約

国土強靱化や地域創生に関する計画策定で重要となる生活インフラの整備やソーシャルキャピタルの向上が農村地域の住民満足度の向上に寄与する効果を、定量的かつ個人レベルと地域レベルに区分して評価するためのウェブアプリケーションである。

  • キーワード:住民満足度、生活インフラの整備、ソーシャルキャピタル、国土強靱化計画
  • 担当:農村防災・減災・農業水利施設防災
  • 代表連絡先:電話 029-838-7570
  • 研究所名:農村工学研究所・農村基盤研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

国土強靱化や地域創生に関する計画策定において、地域住民の意向に沿った計画とするため、上下水道や集落道路のような生活インフラの整備やソーシャルキャピタルの維持に関係するハード及びソフト施策の効果を見える化して示すことが有効である。
本成果は、国土強靱化等の計画作成の担当者が、住民満足度調査の結果をもとに、住民満足度の向上に寄与する影響を個人レベルの要因(年齢や所得等)と地域レベルの要因(生活インフラの整備やソーシャルキャピタルの向上)に区分して定量化する一連の分析をウェブベースで実施可能とするアプリケーションであり、住民の合意が得られやすい計画作成のときのツールとして活用できるものである。

成果の内容・特徴

  • 本アプリケーションは、計画作成の行政担当者等のユーザーが、都道府県内の全市町村を対象に実施する満足度調査の結果をもとに、ウェブページを通じて、調査結果の入力、住民満足度に対する個人レベルの影響要因の分析、地域レベルの影響要因の分析から成る一連の作業を簡単なボタン操作により実施可能とする(図1、図2)。
  • 住民満足度に対する個人レベルの影響要因の分析では、年齢、性別、個人所得のような他の研究で一般的に考慮されている個人属性の他に、住民満足度の地域差(市町村ごとの満足度の平均水準の差)の影響を順序プロビット分析により定量化できる(図3)。
  • 個人レベルの影響要因の分析で、地域差の影響が統計的に有意となった場合は、住民満足度の地域差に影響する要因(ソーシャルキャピタルの水準、地域経済活力指標、都市化の程度、生活インフラの整備水準、外部の注目度)の影響関係と影響度を共分散構造分析(SEM)により分析・図化して見える化できる(図4)。
  • 地域レベルの影響要因の分析で用いるソーシャルキャピタルの水準については、住民満足度調査のときに合わせて実施するアンケート調査の結果から主成分分析により定量化するツール、また、外部の注目度については、行政担当者に対する達観評価アンケート調査等から定量化するツールを提供する。また、地域経済活力と生活インフラの整備水準については、過去の統計値からあらかじめ定量化した値をウェブ上で提供しているが、ユーザー独自の指標値を入力して活用することもできる。

成果の活用面・留意点

  • 全国的に策定が予定されている国土強靱化や地域創生に関する計画作成のときに、農村工学研究所のホームページに掲載するウェブアドレスから利用できる。
  • 分析可能な地域は、都道府県内の市町村単位(2014年時点の市町村ないし2000年時点の合併前市町村)であり、ウェブ上で提供する地域経済活力指標等は、2005年ないし2010年時点のデータにもとづく。
  • 地域レベルの要因分析を行う場合は、50市町村以上のデータが確保できるよう合併前の市町村単位での分析が望ましい。また、都道府県内の市町村とは異なる地域単位(例えば、集落単位)での分析のときには、アプリケーションの改良が必要である。

具体的データ

図1~2

図3~4

その他

  • 中課題名:災害リスクを考慮した農業水利施設の長期安全対策技術の開発
  • 中課題整理番号:412b0
  • 予算区分:競争的資金(科研費)
  • 研究期間:2010~2012年度
  • 研究担当者:國光洋二
  • 発表論文等:
    1)Kunimitsu Y.(2015) SIR. 120:483–497
    2)Kunimitsu Y.(2014) IJEPS. 8:197–214