高圧パイプラインの管内圧力変動緩和装置

要約

本装置は、農業用パイプラインの支線施設の管内圧力変動を緩和させて、塩ビ管の疲労破壊による破裂事故を予防するための附帯施設である。本装置は、最大圧力上昇値を26%低減し、水撃圧発生から10秒~12後の圧力上昇を52%低減する利点を持つ。

  • キーワード:農業用パイプライン、水撃圧、脈動現象、空気室、マンホール
  • 担当:水利施設再生・保全・水利システム診断・管理
  • 代表連絡先:電話 029-838-7563
  • 研究所名:農村工学研究所・水利工学研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

農業用パイプラインの破裂事故において、最も事故数が多い管種は塩ビ管である。その破壊形態の多くは疲労破壊である(図1)。疲労破壊を引き起こす要因は、管内の動水圧が瞬時に変動したり、振動したりすることによって、管の内壁面に大きな引っ張り応力が繰り返し作用することである。したがって、管内圧力の脈動を緩和するために、原則として400m間隔で設置されている空気弁のマンホールスペースを利用して、水撃圧の最大圧力上昇値を小さくし、かつ、圧力振動を速やかに減衰させる新たな附帯施設を開発する。

成果の内容・特徴

  • 圧力変動緩和装置の構成は、空気弁の上流側にエアーチャンバーを備えており、管径が上流の管径よりも大きくなる直前に弁体中央に穴の空いた逆止弁とオリフィスが付属している(図2)。
  • 圧力変動緩和装置は、管径が上流のパイプラインの管径よりも大きくなるために、管内平均流速が遅くなって、上流から連行してきた空気が上昇し易くなり、空気弁から混入空気が排除され、下流側でのエアーハンマー現象による急激な圧力変化を防止する仕組みを備えている。
  • エアーチャンバーの容量は、静水圧、水撃圧、摩擦損失水頭、管内平均流速および管路の口径等によって異なり、条件毎に決定する必要があるが、一般的な大きさのマンホールスペースに収納可能な容量である。
  • エアーチャンバーに圧縮空気が溜められており、管内の急激な圧力変動が生じた際に、その最大圧力上昇値を26%低減する効果がある。さらに、この水理学的過渡現象において逆止弁が閉塞した際には、オリフィスとともに大きなエネルギー損失を発生させることによって、10秒~12後の水撃圧の上昇が52%低減され、圧力の振動を速やかに減衰させる効果がある(図3)。
  • 原則400m毎に設置されている空気弁のマンホールスペースに設置することによって、管内に連行した空気を排除する空気弁の従来機能に加えて、支線管路全体の圧力変動を緩和して、塩ビ管の疲労破壊による破裂事故を予防する効果が期待できる(図4)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:土地改良区・市町村・県・国およびコンサルタントの工事設計技術者。
  • 普及予定地域:全国の畑地灌漑用の高圧管路における塩ビ管(VP管)を敷設した団体営・県営・国営の支線水路。2016年度に官民連携事業を通じて沖縄県宮古島の畑地灌漑用の支線管路において現地実証試験を行い、持続性とメンテナンスの容易性の検証とコスト分析を行う計画である。
  • その他:現地実証試験後に製品化し、販売する計画である。

具体的データ

図1~4

その他

  • 中課題名:農業水利システムの水利用・水理機能の診断・性能照査・管理技術の開発
  • 中課題整理番号:411b0
  • 予算区分:交付金研究、その他外部資金(共同研究)
  • 研究期間:2012年~2015年
  • 研究担当者:田中良和、中田達、樽屋啓之、浪平 篤、中 達雄
  • 発表論文等:1)田中良和、中達雄、樽屋啓之、特許出願準備中