牛の血漿酢酸・ケトン体分析法の改良と栄養管理への応用

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要約

  • 担当:東北農業試験場 畜産部 栄養生理研究室
  • 部会名:畜産
  • 分科会名:家畜
  • 分類:(2)

成果の内容・特徴

  • 技術・情報の内容及び特徴
    1. 血液の酢酸や3-ヒドロキシ酪酸(ケトン体の一種;3-HB)の分析は煩雑であった が、血漿試料をソモギー(Somogy)法で除蛋白した後、食品分析キットを利用 して両成分を簡易に測定できることを明らかにした。
    2. 3-HBにおいては採血直後の分析が推奨されていたが、凍結(-20~-30度C)で 1カ月保存しても分析値に差のないことが判明した。
    3. 放牧地の肉用子牛(日本短角種)の血漿酢酸及び3-HB濃度は発育につれて 劇的に上昇した(表1)。血漿尿素濃度も発育 につれて上昇し、これらは採食量の増加や第一胃内発酵の増進を意味するもの といえる。
    4. 放牧繁殖牛の酢酸及び3-HB濃度は夏期にかけて低下したが、血漿尿素 濃度は夏期及び秋期にかけて上昇した(表2)。
    5. 泌乳牛(分娩後61~300日)の血漿酢酸及び3‐HB濃度は乾物やTDN摂取量、 とくに粗飼料からの摂取量と正の相関を示し、これら栄養摂取と血漿の 遊離脂肪酸(FFA)濃度は負の相関を示した。また、血漿の酢酸や3‐HB濃度が 高い場合には乳脂率及び乳蛋白率も高かった(表3)。
  • 技術・情報の適用効果
    乳牛・肉牛の栄養とくにエネルギー栄養の改善・指導に利用できる;
    1. 乳酸や3‐HB濃度によって子牛の採食能や第一胃機能の発達をモニターできる。
    2. 成牛における乾物やTDN摂取状態の指標としては、血漿のブドウ糖やFFAよりも 酢酸および3‐HB濃度が有効である。
    3. 成分的乳質低下の原因の解明に血漿の酢酸や3‐HB濃度を利用できる。
  • 適用の範囲
    東北全域の乳牛及び肉牛の栄養管理の指導・普及
  • 普及指導上の留意点
    1. 除蛋白試薬(2種)の調製には厳密を要するが、試薬は長期間安定である。
    2. さらに尿素(牛乳尿素でも可)やFFAを測定するとエネルギーのみならず 蛋白栄養の改善にも有効である。

具体的データ

表1 肉用子牛における血漿酢酸、3-HB濃度

表2 肉用繁殖牛の血漿酢酸、3-HB濃度などの季節変化

表3 乳牛の血漿酢酸、3-HB濃度と栄養摂取及び乳成分との相関

その他

  • 研究課題名:乳牛および肉牛における代謝調節と管理技術の改善 乳牛における採食規制要因の解明と管理技術の確立
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :昭和62-平成2、平成2-5
  • 発表論文等:日本畜産学会報(63:199-201、1992)、第85回日本畜産学会発表(1992)