追い移植による肉用牛の双子生産

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要約

人工授精した牛への胚移植(追い移植)によって、受胎率と胚生存率の向上が達成されることが実証され、高い安定した子牛生産が得られた。

  • 担当:東北農業試験場畜産部家畜繁殖研究室
  • 連絡先:0196-41-2145
  • 部会名:畜産
  • 専門:繁殖
  • 対象:家畜類
  • 分類:指導

背景・ねらい

胚移植による双子生産は、肥育素牛の効率的な増殖と低コスト生産を可能にするが、早期胚死滅の発生率が高いことなどの理由により、必ずしも期待した経済的効果をあげていない。そこで、追い移植による子牛生産性を両側子宮角移植による結果と比較し、併せて移植胚の種類による生産性の違いについても比較検討した。

成果の内容・特徴

体外受精胚及び過剰排卵処置7日後に回収した生体内受精胚を人工授精後に追い移植、あるいは両側子宮角に移植し、移植後20、40、60、80日目に超音波診断装置によって胚の着床過程を追跡した。受胚牛には黒毛和種経産牛を主として用い、両側子宮角移植では原則として黄体側子宮角に2胚、非黄体側子宮角に1胚移植した。追い移植では人工授精後6~9日目に非黄体側子宮角に1~2胚移植した。体外受精胚、凍結胚及び低温保存胚を、生体内受精胚は新鮮胚を用いた。

  • 移植後80日までの胚生存率は、非黄体側へ移植したにもかかわらず、追い移植の方が両側子宮角移植と比較して高い値で推移した(図1)。
  • これを胚の種類別に見ると、どちらの移植方法においても生体内受精胚が、体外受精胚と比較して高い胚生存率を示した(図2)。
  • 子牛の生産性は胚生存率同様、生体内受精胚の追い移植で最も高く、移植後80日以降の流産発生率は両側子宮角移植で高かった(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 生体内受精胚の追い移植は、より安定した双子生産を可能とし、 肉用牛増産の有効な技術として活用できる。

具体的データ

図1 移植方法別の胚生存率の推移

図2 移植方法および胚種類別の胚生存率の推移

表1 分娩成績

その他

  • 研究課題名:多数胚着床要因の解明
  • 予算区分 :一般別枠(体外受精)
  • 研究期間 :昭63~平4年
  • 発表論文等:人工授精した牛への胚移植による双子生産、臨床獣医、10巻12号、1992