牛における採食量推定への血漿酢酸濃度の応用

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

給餌5~6時間後の血漿酢酸濃度は、その間の採食量あるいはNDF摂取量と正の相関を示す。このことから、血漿酢酸濃度を指標として牛の栄養管理の改善・指導に利用できる。

  • 担当:東北農業試験場・畜産部・栄養生理研究室
  • 連絡先:0196-41-2145
  • 部会名:畜産(家畜)
  • 専門:飼育管理・動物栄養
  • 対象:家畜類
  • 分類:指導

背景・ねらい

第一胃内では、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの揮発性脂肪酸(VFA)が生産されるが、循環血液中に出現するVFAはほとんど酢酸である。酢酸の生産には粗飼料が深く関係することが知られているが、採食量と血漿酢酸濃度との関係についての詳細な情報は少なかった。そこで、粗飼料あるいは総繊維の摂取量と血漿酢酸濃度との関係について検討した。

成果の内容・特徴

  • 黒毛和種の肥育牛12頭を用いて朝の給餌の5~6時間後に採血し、採食量と血漿酢酸濃度との関係を調べた。(図1)
  • 血漿の酢酸濃度は各種の粗飼料(牧草サイレージ、コーンサイレージおよび稲ワラ)の採食量 と高い正の相関を示した。(図1)
  • 粗飼料からの総繊維(NDF)摂取量と血漿酢酸濃度も高い正の相関を示した。(図2)
  • NDFの摂取水準が同じでも、稲ワラでは血漿酢酸濃度が低く、稲ワラに含まれる繊維の難 消化性が反映されていた。(図2)

成果の活用面・留意点

血液分析によって粗飼料の量的把握が可能となり、牛における栄養管理の改善・指導に 利用できる。
しかし、粗飼料の種類・品質ごとに採食後の酢酸濃度が異なるので、あらかじめ、粗飼料 ごとに推定曲線を準備する必要がある。すなわち、構造性炭水化物(繊維)の摂取量が同じ でも、第一胃内消化率が低い(緩慢な)場合には、血漿酢酸濃度は低く推移する。
なお、酢酸の分析法は平成3年度成果情報で公開済みである。

具体的データ

図1 血漿酢酸濃度と粗飼料摂取量との関係

図2 粗飼料由来のNDF摂取量と血漿酢酸濃度との関係

その他

  • 研究課題名:粗飼料の種類が肥育牛の脂質代謝に及ぼす影響
  • 予算区分 :特研(産肉特性)
  • 研究期間 :平成4年度(平成2~4)
  • 研究担当者:佐藤 博、渡辺 彰、常石英作
  • 発表論文等:肉牛における粗飼料採食量と血漿酢酸濃度の関係、日畜会報、64巻1号、
                      1993。肥育牛の血漿酢酸・ケトン体濃度と栄養管理への活用、日畜東北支
                      部会報、42巻2号、1992。