導入フン虫ガゼラエンマコガネの牛糞利用による大量飼育法

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要約

ガゼラエンマコガネの牛糞利用による大量飼育法として、飼育環境(温度、日長、相対湿度)、培地の種類や含水率及びその深さ、飼育容器、餌量、接種成虫密度等の条件が明らかにされた。

  • 担当:東北農業試験場・畜産部・家畜虫害研究室
  • 連絡先:0196-41-2145
  • 部会名:畜産(家畜)
  • 専門:資源利用
  • 対象:昆虫類
  • 分類:研究

背景・ねらい

近年、家畜飼養の規模拡大や団地化が進むに従い、大量に排泄される家畜糞尿の処理が大きな問題となっている。家畜糞尿には家畜が摂取した飼料エネルギーの40%強が含まれており貴重な資源であるが、肥料等に利用される量は現状では限られている。
食糞性コガネムシ(フン虫)は家畜糞を餌として繁殖し、その虫体は良質な蛋白質を多く含むので、家畜飼料として利用可能であると考えられる。家畜糞でフン虫を大量に繁殖させ、糞を高価値物質に変換する技術は畜産の付加価値創出、低コスト化を図る上で極めて有効と考えられる。このため、繁殖能力の知られているフン虫の内でも特にその能力の高い導入フン虫ガゼラエンマコガネの牛糞利用による大量飼育法を開発した。

成果の内容・特徴

  • 飼育温度は30Cで産卵数が最も多かった(図1)。相対湿度90%条件では飼育途中での給水を省くことができた。飼育日長時間による産卵数への影響は、全明条件で減少傾向が見られた他は認められなかった。
  • 黒ボク土の培地は含水率30~40%で、産卵数、羽化率とも高い値を示した。(図2)。黒ボク土で表面を1~2cm被覆したオガクズ(最適含水率50%)は、軽量培地として利用できた。黒ボク土培地の深さは6cmで次世代羽化数が最大となった(図3)。卵から成虫羽化までは30Cにおいて約24日であった。
  • 飼育容器としては、約11l容量(縦24cm、横36cm、深さ13cm)のポリエチレン製角形容器が、重量、堅牢性、取扱い等で適していた。この容器に黒ボク土5l、牛糞1000gを入れた場合、接種成虫密度は、容器当りの羽化数と1対当りの繁殖効率から総合的に判断すると、4対が 最適と考えられた(図4)。
  • 上記の最適飼育条件を総合化し、容器100箱当りの月産7000~8000頭の生産体制が可能となった。餌として与えた牛糞は数g程度の多数の育児用糞球として培地中に埋め込まれるが、虫の羽化後、この糞球はペレット状有機質肥料として利用可能と考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 本飼育法は、基本的には他の食糞性コガネムシの飼育にも応用できるが、種によってはその生態特性に応じ、温度、密度等の飼育条件を変える必要がある。
  • 本種の大量飼育時の主な死亡要因は糸状菌等による病気なので、培地は毎回交換し、死亡個体は速やかに取り除くことが望ましい。

具体的データ

図1 飼育温度と産卵数との関係

図2 培地含水率と産卵数との関係

図3 培地深さと羽化数との関係

図4 成虫密度と羽化数との関係

その他

  • 研究課題名:昆虫機能利用による家畜糞尿の変換利用技術
  • 予算区分 :大型別枠(新需要創出)
  • 研究期間 :平成4年度(平成3~12年)
  • 研究担当者:山下伸夫・早川博文
  • 発表論文等:山下伸夫・早川博文(1992):導入フン虫ガゼラエンマコガネ(Onthophagus
                      gazella)の室内における大量飼育法. 東北農業試験報 85号:89~101.
                      Yamashita, N. and Hayakawa, H.(1992):Biological control of dung breeding
                      flies with dung beetles in Japan. Proceedings X IX interrational congress
                      of entomology : 316.