毛状根利用によるトビムシやササラダニの根域行動解析法

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要約

トビムシやササラダニの根周囲の行動や、土壌伝染性病原糸状菌の摂食行動、糸状菌抑制効果等を直接観察する方法を検討し、培地に培養した毛状根を用いる方法を確立した。

  • 担当:東北農業試験場・畑地利用部・畑土壌管理研究室
  • 連絡先:0245-93-5151
  • 部会名:生産環境
  • 専門:土壌
  • 対象:
  • 分類:研究

背景・ねらい

作物根の周囲に生息するトビムシやササラダニのなかには、土壌の理化学性に少なからぬ影響を及ぼす種類や、土壌伝染性糸状菌を摂食し、畑作物の根への感染を抑制する種類がいる。しかしながらこれらのトビムシやササラダニの作物根の周囲における行動の解明は、土壌中であるため不可能であった。そこで直接観察する方法を、毛状根を用いて検討した。

成果の内容・特徴

  • (1) 行動解析用根域作成:
    シャーレ(内径9cm)内の毛状根用ゲランガム(WP)培地(厚さ2mm)を、 3分割し片側2/3を剥がす。 その剥離部に糸状菌用ポテトデキストローズ(PDA)寒天培地を敷き詰め(厚さ2mm)、 WP培地と幅約2cm離れるようにさらに1/2を剥がす。 WP培地に毛状根およびPDA培地に糸状菌を置床する。 ゲランガムは通常0.2%であるが、 剥離作業を円滑に行うためには0.5%が適当である。
    (2) トビムシとササラダニの移入と観察:
    増殖した菌糸が、PDA培地と剥離部の接触面に到達後に、 トビムシあるいはササラダニを剥離部の中央に静かに移入し、 その行動を実体顕微鏡で観察する。
  • この方法を用いることにより、移入したトビムシとササラダニの根周囲の行動、 糸状菌の根への感染行動および移入した動物の糸状菌摂食による感染抑制機構などが 直接観察できる。

成果の活用面・留意点

  • 移入動物由来菌による汚染防止のため動物は移入前に数日間無菌状態で飼育する。
  • 毛状根の培養・移植及び検定菌株の培養・置床は、通常用いられる方法で行う。
  • 当該研究室ではアズキとダイズ毛状根を保管しており、供与可能である。 

具体的データ

表1 毛状根用(WP)培地組成

図1 行動解析用根域

図2 アズキ毛状根表面のトビムシ

その他

  • 研究課題名:不耕起栽培における土壌動物の特性の解明
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成6年度(平成5年~7年)
  • 発表論文等:植物根、病原微生物と土壌動物の関連解明への毛状菌の利用。
                      Edaphologia 52:61-63. 1995.