食味といもち病抵抗性の結びついた稲系統は選抜できる

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要約

食味と相関の高い炊飯光沢と、いもち病圃場抵抗性の間には負の相関が認められない。そして、食味が良く、いもち病圃場抵抗性の強い系統が存在する。良食味、いもち病抵抗性系統の選抜には、穂いもち圃場抵抗性の初期選抜が有効である。

  • 担当:東北農業試験場・水田利用部:稲育種研究室
  • 連絡先:0187-66-2773
  • 部会名:水稲
  • 専門:育種
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

従来より、食味といもち病圃場抵抗性との間には負の相関があり、両者を結びつける育種は難しいといわれてきた(イネのいもち病と抵抗性育種 1980)。実際に「コシヒカリ」、「あきたこまち」に代表される現在の良食味品種は、圃場抵抗性が弱い。上原ら(1985)は、組合せによっては食味が良く、葉いもち抵抗性が強い系統が選抜できることを明らかにした。本研究では、食味と葉いもち及び穂いもち抵抗性の結びついた系統育成の可能性を検討する目的で、食味と圃場抵抗性の異なる両親の後代系統を調査する。

成果の内容・特徴

  • 「あきたこまち」または「東北143号(ひとめぼれ)」を片親とする5組合せの F5系統(各3,000個体のF4集団から草姿で選抜)を調査した結果、炊飯光沢(食味と相関が高い)と葉いもち抵抗性、穂いもち抵抗性との間には、それぞれ1組合せを除いて強い相関関係が認められない (表1)。
  • 食味、葉いもち抵抗性、穂いもち抵抗性の3特性が優れた系統の出現頻度は、組合せによって1.9~7.3%のばらつきがあるが、すべての組合せで食味が良く、いもち病抵抗性の強い系統が存在する(表1)。
  • 以上より、本組合せからは食味が良く、葉いもち及び穂いもち抵抗性の強い系統の選抜が可能である。
  • F4世代の雑種集団で穂いもち抵抗性の強いものを個体選抜すると、食味、葉いもち抵抗性、穂いもち抵抗性が優れた系統の出現頻度が著しく高まる (表2)。
  • 良食味、いもち病抵抗性の品種として「おきにいり」等が育成された。また、本組合せから「奥羽363号」、「奥羽366号」(組合せはどちらも東北143号/奥羽388号)等が育成された。

成果の活用面・留意点

  • 良食味、いもち病抵抗性系統を育成するための基礎資料として用いる。
  • 穂いもち抵抗性の初期選抜が有効なので、積極的に初期選抜を進める。

具体的データ

表1.各組合せのF系統における炊飯光沢と葉いもち抵抗性、穂いもち抵抗性との相関係数及び3特性の優れた系統の出現頻度

 

表2.穂いもち抵抗性個体選抜による葉いもち抵抗性強、穂いもち抵抗性強、炊飯光沢良及び3特性の優れた系統の出現頻度

その他

  • 研究課題名:いもち病抵抗性の品種の育成
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成9年度(平成2年~8年)
  • 発表論文等:
    イネの良食味、いもち病抵抗性系統の選抜、東北農試研報、第92号、35~42、1997。
    いくつかの組合せによる良食味、いもち病強系統の出現頻度、日作東北支部報、第37号、93~95、1994。
    イネの良食味、いもち病抵抗性の個体選抜結果、日作東北支部報、第38号、117~119、1995。