泌乳期における黒毛和種雌牛のインシュリン及び成長ホルモン分泌機能

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要約

泌乳期における黒毛和種のインシュリン(同化ホルモン)分泌機能はホルスタイン種に比べ有意に高い。また、インシュリン感受性は品種間で差がなく、妊娠末期に比べ低下する。一方、成長ホルモン(異化ホルモン)分泌機能は低い。品種間による同化及び異化ホルモン分泌機能の違いが泌乳量の差に関わる要因の一つと考えられる。

  • 担当:東北農業試験場・畜産部・栄養生理研究室
  • 連絡先:019-643-3543
  • 部会名:畜産(家畜)
  • 専門:畜産
  • 対象:乳肉用牛
  • 分類:研究

背景・ねらい

泌乳は多くのホルモンによって調節されている。中でも乳糖合成の前駆物質であるグルコースの代謝と密接に関連するインシュリンや成長ホルモン(GH)はその重要な一員である。しかし、我が国の主要肉用牛である黒毛和種雌牛の泌乳期におけるこれらホルモンの分泌動態に関する知見は皆無に等しい。
そこで本研究では、泌乳期における黒毛和種雌牛のインシュリン分泌機能並びにインシュリン感受性、及びGH分泌機能をホルスタイン種雌牛と比較することによって、黒毛和種雌牛の泌乳に関与するホルモン分泌機能を明らかにすることを目的とする。

 

成果の内容・特徴

  • 分娩後180日間の総乳量は黒毛和種で平均482.4kg(例数6)、ホルスタイン種で平均 4,807.4kg(例数7)であり、平均日乳量は各々2.7kg、26.7kgであった。
  • 黒毛和種のインシュリン分泌機能はホルスタイン種に比べ大きかった。妊娠末期 (分娩前2週)に比べ泌乳期でインシュリン分泌機能が低下したホルスタイン種に対して、黒毛和種ではほぼ類似したものとなった( 図1)。
  • インシュリン感受性に品種間差は認められなかった。また、両品種とも妊娠末期に比べ泌乳期で低下した(図2)。
  • 黒毛和種の泌乳期における糖利用速度(代謝回転速度)はホルスタイン種に比べ遅くなった。
  • 黒毛和種のGH分泌機能はホルスタイン種よりも小さかった。ホルスタイン種では妊娠末期に比べ泌乳期で大きくなったが、黒毛和種では各ステージで類似した (図3)。
  • 黒毛和種の血漿インシュリン基礎値に対するGH基礎地の比(GH:インシュリン比)はホルスタイン種と比べて極めて小さくなった。また、いずれの泌乳ステージにおいてもほぼ類似した値であった(図4)。
  • これらの結果は、泌乳期においても摂取した飼料エネルギーを乳生産よりも体蓄積に主として配分する肉用牛の特性を反映している。

成果の活用面・留意点

泌乳期における黒毛和種雄牛のホルモン分泌機能に関する新しい基礎知見である。

具体的データ

図1.インシュリン分泌機能の変化

 

 

図2.インシュリン感受性の変化

 

図3.GH分泌機能の変化、図4.GH:インシュリン比の変化

 

その他

  • 研究課題名:乳牛及び肉牛の発育ステージにおけるホルモン分泌機能の比較・解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成10年度(平成5年~平成10年)
  • 発表論文等:
    • 黒毛和主(B)及びホルスタイン種(D)雌牛の泌乳期における代謝ホルモン分泌特性: 1.成長ホルモン(GH)分泌機能ならびに乳量、乳成分の変化. 第96回日本畜産学会大会講演要旨集. p94. 1999.
    • 黒毛和主(B)及びホルスタイン種(D)雌牛の泌乳期における代謝ホルモン分泌特性: 2.インシュリン(Ins.)分泌機能及び感受性の変化. 第96回日本畜産学会大会講演要旨集. p95. 1999.
    • Profiles of growth hormone and insulin secretion in Japanese Black(beef type) and Holstein(dairy type) cows during lactation. S.Afr.J.Anim.Sci.,29.(ISRP) pp278-279. 1999. IX International Symposium on Ruminant Physiology.