肥育後期におけるイネホールクロップサイレージの給与効果

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

肥育後期の黒毛和種去勢牛には1日あたり7kgのイネホールクロップサイレージを給与でき、濃厚飼料給与量を節減できる。また、血液中のビタミンA濃度を正常値に保つ効果があり、枝肉の格付においても脂肪(BFSNo.)の色に問題はない。

  • キーワード:動物栄養、肉用牛、肥育、イネサイレージ、ビタミンA、枝肉
  • 担当:東北農研・畜産草地部・栄養飼料研究室
  • 連絡先:019-643-3543
  • 区分:東北農業・畜産、畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

我が国の畜産は海外から濃厚飼料原料ばかりでなく、乾草や稲ワラなど粗飼料も一部輸入している。一方で、稲作においては米の過剰により生産調整が強化されている。このような状況で、水田機能を維持し、かつ飼料を自給するためにはイネの飼料化が有効である。イネホールクロップサイレージ(イネWCS)は収量が多く、穀実部分が濃厚飼料の代替となることが期待される。そこで、本課題ではイネWCSを肥育後期に多給した場合の肥育効果を検討した。

成果の内容・特徴

  • 黒毛和種去勢牛の18.5ヶ月齢からの肥育後期にイネホールクロップサイレージ(イネWCS)を多給する肥育方法を、慣行の稲ワラ給与法と比較した(表1)。肥育前期は乾草と濃厚飼料を、また、イネWCSは黄熟後期と黄熟期に収穫した乾物率が約38~48%のものを給与した。なお、イネWCSのβカロテン含量は10~20mg/kgDMであった。
  • イネWCSの嗜好性は良く、1日当たりの原物摂取量は約7kg(乾物換算:約2.5~3kg)である(表2)。この場合の濃厚飼料の摂取量は約6kgである。このように、イネWCSを多給することにより、濃厚飼料の給与量を稲ワラ区よりも抑制して、同等以上の日増体量を得ることが可能である。
  • 稲ワラ区は粗飼料をワラに切り替えた3ヶ月以降から血液中のビタミンA濃度がしだいに低下するのに対して、イネWCS給与区は肥育期間を通じて45~60μg/dlの正常値を維持する(表3)。
  • 枝肉の格付を同一種雄牛の産子で比較すると、稲ワラ区が全頭4等級であったのに対して、イネWCS給与区ではややばらつく程度で、脂肪の色(BFSNo.)に問題はない(表4)。

成果の活用面・留意点

  • 肥育後期においてイネWCSを多給できることを明らかにした。
  • 粗飼料では予乾の有無など収穫調製法によってβカロチン量が変動する。本試験はダイレクトカットで収穫したイネWCSを給与した。

具体的データ

表1 供試頭数と飼料給与

 

表2 肥育後期における日増体量と飼料摂取量

 

表3 イネWCS給与開始後の血中レチノール(ビタミンA)濃度の推移

 

表4 肥育後期にイネWCSを多給した場合の枝肉格付(同一種雄牛産子の比較)

その他

  • 研究課題名:ホールクロップサイレージ用イネによる地域資源型肉牛生産技術の開発
  • 予算区分:21世紀3系
  • 研究期間:1999~2001年度
  • 研究担当者:篠田満、櫛引史郎、新宮博行、上田靖子、村井勝、嶝野英子、田中治