コムギ種子発達過程遺伝子発現モニター用DNAチップ

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要約

コムギ種子発達過程で発現する遺伝子をアレイ技術により網羅的にモニターするのに適した種子組織由来の約2600cDNAクローンをプ リントしたDNAチップを開発した。

  • キーワード:コムギ、登熟、遺伝子発現、DNAチップ、マイクロアレイ
  • 担当:東北農研・作物機能開発部・生物工学研究室
  • 連絡先:電話 019-643-3514、電子メール tnaka@affrc.go.jp
  • 区分:東北農業・生物工学
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

地域産業創出につながるコムギ品種開発のためには、製パン、製麺等の加工特性の改良が必要である。それら加工特性には、明らかに品 種間差が存在するが、そ れら差の原因となる具体的形質、さらにそれら形質を支配する遺伝子の関係は、まだ十分になされていないのが現状である。各種加工適 性に関与すると考えられ る候補遺伝子をスクリーニングする方法として、マイクロアレイにより種子の形成過程で発現する遺伝子(群)の発現を、器官(胚乳、 胚等)、時期(開花直 前~完熟期)、品種間で網羅的にモニターし、その発現パターンの差を使う方法が考えられる。しかしながら、そのような目的に使える DNAチップは世界的に 見ても開発されていない。そこでコムギ種子の遺伝子発現用のDNAチップを開発する。

成果の内容・特徴

  • 本DNAチップには、コムギ品種Chinese Springの開花直前から開花後45日までの種子組織由来のcDNAライブラリより得た2624クローンを、cilylateスライドに各クローン4ス ポット(上下2段、左右2ブロック)で、2枚のスライドグラスに分けてプリントしたものである(図1)。
  • 本DNAチップ上の2624クローンのうち、2096遺伝子(表1) は、独立遺伝子であり、それらのうちBLAST検索等で機能が推定されたものは約77%であり、貯蔵タンパク質、多糖合成酵素、ストレス 誘導系、などで あった。残り23%の遺伝子に関しては機能不明であり、その多くは、イネのゲノムシークエンスに高い相同性を示す遺伝子である。
  • 本DNAチップには、内部標準用遺伝子としてCAT、 GUS、 Keratine、TGEVnp (ブタのウイルスのcapsidタンパク)、Strapt avidin、 Laminin receptorをプリントしてある。
  • ハイブリダイゼーションは、Clontech社のExpressHyb溶液を使い60℃、14時間、洗浄は、SSC及びSDSを使い55℃で行った場合(図2 )、最も良いハイブリパターンが得られる。また、2枚のスライドグラスは接着性のスペーサーを使うことにより、ハイブリ溶液は1枚 のスライド分で済む。

成果の活用面・留意点

  • 本DNAチップは、コムギ種子組織(胚珠、胚乳、胚、果皮)の発達過程で発現する遺伝子のアレイ解析に有効である。
  • ターゲットRNAは、Cy3、Cy5の2蛍光標識でアレイ実験を行う。蛍光標識は直接法では無く、アミノアリルdUTPを用いた間接標識法 で行う。
  • アレイ実験においては、データの信頼性を高めるため、プリントされた内部標準遺伝子より逆転写したRNA複数をターゲットRNAに一 定量加えて行うべきである。
  • 使用するRNAは、 BioAnalyzer等の機器により、品質をチェックし、リボゾーム28Sと18Sの比率が1.5以上のものを使用することが望ましい。例えば、胚乳組織のRNAは開花25日以降大幅なRNAの分解が見られ(図3)、アレイ実験を行う場合は注意を要する。

具体的データ

図1 10DPAにおける胚と胚乳由来RNAによるマイクロアレイ画像イメージ

 

表1 小麦種子遺伝子発現解析用DNAチップの遺伝子分類

 

図2 ハイブリ後のスライド洗浄と乾燥

 

図3 開花10日後(10DPA)以降の胚乳組織由来のRNAの品質

 

その他

  • 研究課題名:DNAチップ利用によるコムギ分子育種技術の開発
  • 課題ID:05-06-05-01-07-03
  • 予算区分:コムギDNAチップ
  • 研究期間:2000~2003 年度
  • 研究担当者:中村俊樹、新畑智也(日本製粉)、齊藤美香(重点支援)、米丸淳一、Patricia Vrinten(STAF) 、飯田順子(日本製粉)