自脱コンバインと自走ロールベーラを用いた稲発酵粗飼料の予乾収穫体系

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要約

自脱コンバインに簡単な部品を付加することで稲の刈倒し作業に利用できる。自脱コンバインで稲を刈倒した後、稲わら収集用のピックアップ型自走ロールベーラで拾上げ・梱包することで、地耐力の低い圃場に対応した稲発酵粗飼料の予乾収穫体系が構築できる。

  • キーワード:農業機械、飼料イネ、予乾収穫、自脱コンバイン、自走ロールベーラ
  • 担当:東北農研・総合研究部・農業機械研究室
  • 連絡先:電話019-643-3535、電子メールrotani@affrc.go.jp
  • 区分:東北農業・作業技術、共通基盤・総合研究、共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

稲発酵粗飼料の予乾収穫方式は、高水分条件で収穫されることの多い専用収穫機によるダイレクトカット方式に比べ、高品質なサイレージ調製が可能であるが、現行の牧草用収穫機を用いる体系では、地耐力の高い圃場に限定されている。そこで、稲作農家が所有する自脱コンバインと、稲わら収集用に一部農家に普及しているピックアップ型の自走ロールベーラを用いて、軟弱圃場に適用可能な予乾収穫体系を確立する。

成果の内容・特徴

  • 自脱コンバインは、刈取り部とこぎ胴の間の刈り稈搬送用部品(縦搬送チェーンのガイド棒、フィードチェーン押さえ板バネ)を取り外し、刈り稈がフィードチェーンに供給されないようにカバー(試作部品)を装着することで、稲の刈倒し作業に利用できる(図1-a)。部品交換作業に要する時間は6分程度である。
  • 自脱コンバインによって刈倒された稲の列(ウィンドロー)は、コンバイン進行方向左側に生成される。ウィンドローの幅は、ほぼ「草丈-刈高さ」となり、草丈1mの稲を刈高さ5cm、刈幅1.2mで刈倒す場合、隣接するウィンドローの間隙は約25cmとなる。
  • 自脱コンバインで刈倒したウィンドローを刈株上で予乾し、稲わら収集用のピックアップ型自走ロールベーラで拾上げ・梱包することで、稲発酵粗飼料の予乾収穫体系が構築できる(図1)。どちらの機械も走行部がクローラであり、地耐力の低い圃場に対応できる。
  • 4条刈の自脱コンバイン(K社製AR43)と、チャンバ径・幅1.2mの自走ロールベーラ(T社製SR1230C、ピックアップ幅1.2m)を用い、ラッピングマシン設置場所まで自走ロールベーラ自身でロールベールを運搬した場合の作業能率は、稲の刈倒しが40a/h、拾上げ・梱包・運搬が18a/h程度である(表1)。
  • 自走ロールベーラのピックアップタイン下端と地表面の距離が2cmで、刈株の高さが7~8cmの場合、拾上げロスは条間が広くなるほど、また条播より株植えで大きくなる(図2)。
  • 本収穫体系でのロールベールの乾物見掛け密度は、含水率55%前後では160kg/m3程度であり、含水率が低くなるほど増加する(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 本収穫体系は、ホイールトラクタを用いる予乾体系に比べ、地耐力の低い圃場に適用できる。
  • 稲の刈倒し作業は、自脱コンバインの進行方向左側に稲を刈倒すため、右回り作業とする。そのため、コンバイン刈取り部が機体左側にオフセットしているものは使用できない。
  • 圃場縁では畦畔上に稲が刈倒されるため手作業で圃場内に戻す必要がある。

具体的データ

図1 自脱コンバインとピックアップ型自走ロールベーラを組み合わせた予乾収穫体系

 

表1 刈倒し及び拾上げ・梱包・運搬の作業能率

 

図2 自走ロールベーラの拾上げロス   図3 ロールベールの乾物見掛け密度

その他

  • 研究課題名:自脱コンバインの汎用利用による低コスト予乾収穫体系の確立
  • 課題ID:05-05-06-02-17-04
  • 予算区分:寒冷地飼料イネ
  • 研究期間:2004~2008年度
  • 研究担当者:大谷隆二、天羽弘一、西脇健太郎
  • 発表論文等:大谷ら (2004) 農機学会東北支部報51:15-18