アカスジカスミカメ地域個体群の遺伝的多様性

要約

日本のアカスジカスミカメの遺伝的多様性には地域間差があり、大きく3つのグループに分けられる。全国的な斑点米被害の増加は、各地域に土着の個体群の個体数増加の結果である。

  • キーワード:斑点米、アカスジカスミカメ、遺伝的多様性
  • 担当:東北農研・斑点米カメムシ研究東北サブチーム
  • 代表連絡先:電話 0187-66-2772
  • 区分:東北農業・基盤技術、共通基盤・病害虫
  • 分類:研究・普及

背景・ねらい

アカスジカスミカメは、以前は生息数が少ないまれな種であったが、1980年代に初めて宮城県と広島県で斑点米被害が相次いで報告された後、2000年以降急激に全国に被害を拡大した。現在、本種の発生は北海道から九州までほぼ日本全域で確認され、最も警戒を要する斑点米カメムシ種である(参考図)。 本種による斑点米被害が近年急激に拡大した理由は明らかではないが、害虫化の原因として、1)一部の害虫化した個体群が全国的な分布拡大している可能性と、2)全国各地の土着個体群が独立して同時に害虫化している可能性が考えられる。本種地域個体群の遺伝的多様性を調査することで、斑点米被害拡大の過程と要因を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 全国24地域個体群の478個体について、ミトコンドリアDNAと核DNAの7遺伝子座の遺伝的多様性を解析し、系統関係を明らかにした(図1)。
  • 日本のアカスジカスミカメ個体群は、大きく北日本群、南日本群、関東群の3群からなる(図2)。
  • ミトコンドリアDNAの遺伝的多様度は北日本群で高く、南の個体群ほど低い(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 1980年代に報告された宮城県と広島県の斑点米被害は遺伝的に全く異なる本種個体群から生じており、2000年以降問題化した関東地方の被害も、他地域からの侵入ではなく、この地方に特有の個体群の害虫化によるものである。
  • 本種による斑点米被害はそれぞれの地域に土着の個体群から独立に生じ、全国レベルでの本種の移動や分布拡大により広まったのではないと考えられる。
  • 全国レベルでの分布拡大の可能性は否定できるが、明らかになった各群内での移動や分布拡大の解明にはさらに研究を要する。

具体的データ

図1.地域個体群間の系統関係(遺伝的距離に基づく近隣接合法)

図2.地域個体群の遺伝的多様性によって分けられた3つの群

図3.ミトコンドリアDNAの多様度と緯度の関係(▲:北日本群、■:関東群、●:南日本群)

(参考図)本種が重要な斑点米カメムシ種とされる都道府県の分布(農水省植物防疫課とりまとめ資料による)

その他

  • 研究課題名:斑点米カメムシ類の高度発生予察技術と個体群制御技術の開発
  • 課題ID:214-g.3
  • 予算区分:基盤、実用技術
  • 研究期間:2006-2008年度
  • 研究担当者:小林徹也、櫻井民人
  • 発表論文等:T. Kobayashi (2008) Mol. Ecol. Res. 8:690-691.