東北地域における水稲耐冷性"極強"以上の新基準品種の選定

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要約

東北地域における水稲穂ばらみ期耐冷性基準品種を、従来の評価で最も強い“極強”より3ランク強い“極強11”まで選定した。新基準品種により“極強”より強い水稲品種・系統の耐冷性の評価が可能になる。

  • キーワード:イネ、品種、耐冷性、東北地域、基準品種
  • 担当:東北農研・低コスト稲育種研究東北サブチーム
  • 代表連絡先:電話0187-66-2773
  • 区分:東北農業・作物(稲育種)、作物
  • 分類:研究・普及

背景・ねらい

現在の水稲の穂ばらみ期耐冷性評価では、“極強”が最も強いランクとなっている。しかし、2003年の冷害では耐冷性が“極強”の品種でも不稔が多発した地域があり、それより強い品種が求められている。一方で、“極強”より強い耐冷性を持つと思われる系統が各育成地で開発されているが、基準品種がないため耐冷性強度の評価ができていない。そこで今後“極強”より強い耐冷性品種を育成するために“極強”以上の耐冷性基準品種を選定する。

成果の内容・特徴

  • 東北地域の7試験地(青森県産業技術センター農林総合研究所藤坂稲作研究部、岩手県農業研究センター、宮城県古川農業試験場、秋田県農林水産技術センター農業試験場、山形県農業総合研究センター水田農業試験場、福島県農業総合センター浜地域研究所、東北農業研究センター)において、2004年から2008年の5年間、恒温深水法で耐冷性を熟期別に評価し、その結果より基準品種を選定した(表1)。
  • “極強”より強い基準の呼称は、“極強”がUPOV(植物新品種保護国際同盟)の評価で“8”であることから、“極強”より1ランク強くなる毎に“極強9”、“極強10”、“極強11”とする(表1)。
  • 新基準品種では、従来の“極強”までの評価に加えて、極早生(ユメコガネ級)では“極強9”まで、早生、早生晩及び中生では“極強11”までの耐冷性の評価が可能である。
  • “極強”以上の品種間差異は、設定水温が低い条件でより明瞭である(表2)。そのため “極強”以上の耐冷性の評価には水温18.6°C以下の厳しい条件設定が望ましい。

成果の活用面・留意点

  • 東北地域における“極強”より強い耐冷性品種・系統の評価に使用できる。
  • 新基準品種には極端に長稈のものはなく、幼穂への低温処理は恒温深水法で十分に可能である。
  • 早生晩熟期で“極強11”の「東北PL1」は、年次・試験地によっては出穂が早生晩熟期より2週間程度遅くなる場合がある。そのため基準品種として用いる場合には、検定品種と基準品種の出穂期の違いに留意する必要がある。

具体的データ

表1 “強”以上の東北地域耐冷性新基準品種一覧

表2 設定水温の違いによる不稔率

その他

  • 研究課題名:直播適性に優れ、実需者ニーズに対応した低コスト業務用水稲品種の育成
  • 中課題整理番号:311a
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2004~2008年度
  • 研究担当者:中込弘二、山口誠之、片岡知守、須藤充(青森産技セ)、神田伸一郎(青森産技セ)、中野央子(岩手中央農改普及セ)、田村和彦(岩手中央農改普及セ)、阿部陽(岩手農研セ)、永野邦明(古川農試)、佐々木都彦(宮城県気仙沼地域地方振興局)、遠藤貴司、我妻謙介(古川農試)、川本朋彦(秋田農技セ農試)、後藤元(山形県庄内総合支庁)、水戸部昌樹(山形県立農大)、大谷裕行(元福島農セ)、木田義信(福島農セ農業短大)
  • 発表論文等:中込ら(2009)東北農業試験研究62:1-2