市販土壌ECセンサを用いた海水浸水農地の土壌電気伝導度簡易測定法

要約

海水浸水農地の簡易な土壌電気伝導度の測定法として市販の土壌ECセンサが利用できる。土壌ECセンサは、ペースト状か湿潤状態の土壌を圧密して測定すると測定値が安定する。土壌ECセンサ測定値から慣行法へ読み替えて除塩の指標とする。

  • キーワード:除塩、土壌ECセンサ、簡易測定、電気伝導度、海水浸水農地
  • 担当:新世代水田輪作・高能率水田輪作システム
  • 代表連絡先:電話 019-643-3411
  • 研究所名:東北農業研究センター・生産基盤研究領域、生産環境研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

海水浸水農地の土壌塩分濃度の把握には、測定が簡便な乾土1に対し蒸留水5を加えた懸濁液の電気伝導度(以下、EC1:5)が用いられている。しかし、海水浸水農地が広域である場合や下層への塩分移動を調査する場合には、EC1:5法でも多大な労力が必要である。そこで、市販の土壌ECセンサを用い、懸濁操作を行わずに土壌ECを簡易に測定する方法を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 市販の土壌ECセンサHANNA社「土壌EC計HI98331 Soil test」(以下,HI98331)、DECAGON社「土壌水分・温度・EC測定プローブ5TE(データロガーに接続して使用)」(以下、5TE)を用いて、海水浸水農地の作土、下層の土壌ECを測定する(図1)。
  • 土壌ECセンサの測定値は、ペースト状(含水比概ね80%以下)、または塑性限界以上の湿潤土壌を手で握る等の圧密条件で測定すると安定する(図2)。
  • 海水浸水農地の湿潤土の土壌ECセンサ測定値とEC1:5測定値は、圧密が強い条件ほど相関が高く(図3、図4)、ペースト状態で測定した場合との差が小さい(図4)。
  • HI98331を用いて海水浸水農地の現場での土壌ECを測定する場合、6cm径程度のオーガーを用いて採取した土壌をそのまま指で押し固めてセンサを挿入するか、ビニール袋に採取し、手で握りしめて圧密状態でセンサを挿入する。手で握って水分を感じる含水比の湿潤土やペースト状の土壌が測定に適しており、乾燥土壌では蒸留水を加水して測定する。EC1:5への読み替えは、図4の近似式に基づき土壌ECセンサの測定値に0.4(予測値の95%信頼区間より判断)を乗ずる。

成果の活用面・留意点

  • 農水省の除塩マニュアル等に従い、海水浸水農地の作土し、必要に応じてそれ以深の土壌調査に利用して除塩の目安とする。
  • センサの精度は、HI98331が測定範囲0~400mSm-1(カタログ値、実測では700mSm-1程度まで精度を維持、校正可能)、精度±2.5% (200 mSm-1以下)、±15% (200mSm-1以上) 、5TEが測定範囲0~2300mSm-1、精度±10%(0~700mSm-1)、である。
  • HI98331は、16,000円前後で市販されている。
  • 塑性限界は、ガラス板上で土壌の塊を直径3mmのひも状にした時に切れぎれになる含水比を示す。砂土は塑性限界が示せないが、一定以上(本調査では25%以上)の含水比で土壌ECセンサによる測定が可能である。
  • ナトリウム塩の影響が主体の岩手県、宮城県の海水浸水農地における調査結果である。

具体的データ

図1 土壌ECセンサと測定状況
図2 土壌含水比と土壌ECの関係
図3 土壌E Cセンサ値とEC1:5の関係 (センサ:5TE)
図4 土壌E Cセンサ値とEC1:5の関係 (センサ:HI98331)

(関矢博幸)

その他

  • 中課題名:作業の高速化による高能率低投入水田輪作システムの確立
  • 中課題番号:111b1
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011年度
  • 研究担当者:関矢博幸、冠秀昭、吉住佳与、大谷隆二