蒸煮大豆の硬さに関与するQTLの同定とDNAマーカーの開発

要約

蒸煮大豆の硬さに関与する効果が大きいQTLは第3染色体上に座乗する。QTL領域に開発した2つのDNAマーカーは蒸煮大豆の硬さの判別に有用である。

  • キーワード:ダイズ、QTL、DNA マーカー、加工適性、蒸煮硬度
  • 担当:作物開発・利用・大豆品種開発・利用
  • 代表連絡先:電話 0187-75-1084
  • 研究所名:東北農業研究センター・水田作研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

大豆食品には吸水大豆を蒸煮して加工する煮豆、納豆、味噌などがある。これらの加工適性においては、用途によって求められる度合いが異なるものの、蒸煮大豆の硬さが重要視されている。蒸煮大豆の硬さについては品種間差が存在することが知られており、成分面を中心に研究が進められてきが、その要因は明らかになっていない。また、蒸煮大豆の硬さの測定には労力を要するため、育種現場で多数の系統を評価することが難しく、効率的な選抜方法が必要である。そこで、本研究では、蒸煮大豆の硬さが異なる「納豆小粒」と「兵系黒3号」の組換え自殖系統(RILs)を用いて、育成材料の蒸煮大豆の硬さの判別に有用なDNAマーカーを開発することを目的とする。

成果の内容・特徴

  • 大豆品種「納豆小粒」と「兵系黒3号」のRILs(2010、2011 年産)を用いた蒸煮大豆の硬さに関するQTL解析から、効果の大きい2つのQTL(qHbs3-1およびqHbs6-1)が第3および第6染色体上に存在すると推定できる(図1、表1)。
  • 2つのQTLのうち、より効果が大きいqHbs3-1の領域をヘテロ状態で保持している1系統をRILsから選抜した(図2)。その後代をQTL領域に設計したSSR マーカー(BARCSOYSSR_03_0172およびBARCSOYSSR_03_0175)の遺伝子型を基に個体別に「納豆小粒」型と「兵系黒3号」型に分類して収穫物の蒸煮大豆の硬さを測定すると、両グループ間で有意な差が認められる(図2、表2)。
  • 蒸煮大豆の硬さを制御する遺伝子はBARCSOYSSR_03_0165とBARCSOYSSR_03_0185の間に存在すると推定でき、これらは蒸煮大豆の硬さに関する選抜DNAマーカーとして利用できる(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 本実験では、20~24時間浸漬した後、沸騰水中で10分間加熱した大豆種子の破断応力を蒸煮大豆の硬さの指標とした。
  • BARCSOYSSR_03_0165とBARCSOYSSR_03_0185の配列情報は、ダイズのゲノムデータベースSoybase(http://soybase.org/)から入手可能である。
  • qHbs3-1は「納豆小粒」と「兵系黒3号」のRILsに関する解析から見出されたQTLであるため、その他の交雑組合せにおける効果については今後検討する必要がある。
  • qHbs6-1は、qHbs3-1より効果が小さいものの、DNAマーカーを開発することで、蒸煮大豆の硬さに関してより詳細なマーカー選抜が実現する可能性がある。

具体的データ

図1~2,表1~2

その他

  • 中課題名:気候区分に対応した安定多収・良品質大豆品種の育成と品質制御技術の開発
  • 中課題整理番号:112f0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2010~2014年度
  • 研究担当者:平田香里、羽鹿牧太、増田亮一、坪倉康隆、安井健、高橋浩司、山田哲也、石本政男(生物研)、佐山貴司(生物研)
  • 発表論文等:Hirata K. et al. (2014) Breed. Sci. 64: 362-370