日本短角種2シーズン放牧における肥育中期の目標日増体量は0.6kg以上である

要約

日本短角種の肥育中期の日増体量は、2シーズン放牧の場合、0.6kg/日以上を目標とすることが望ましく、牧草が不足する時期には補助飼料の給与が必要である。また、2シーズン放牧牛の枝肉重量は小さくなるものの枝肉中の筋肉組織割合は増加する。

  • キーワード:2シーズン放牧、日本短角種、肥育中期、日増体量、代償性発育
  • 担当:自給飼料生産・利用・寒冷地肉用牛飼養
  • 代表連絡先:電話019-643-3541
  • 研究所名:東北農業研究センター・畜産飼料作研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

日本短角種の2シーズン放牧肥育では、放牧による肥育中期の増体の低下が懸念されるものの、その後の舎飼時の代償性発育によって通年舎飼牛との体重差は小さくなる。さらに、代償性発育は栄養制限時の条件によってその後の発育程度が異なることが知られている。
そこで、もっとも効率よく代償性発育が発現される肥育中期の日増体量を検討する。

成果の内容・特徴

  • 代償性発育が発現したと考えられる2シーズン放牧牛における肥育中期と肥育後期の増体の関係を調べると、肥育中期の増体が0.44kgを頂点とする曲線回帰が得られ、肥育中期の日増体量0.44kg/日の時、肥育後期の日増体量は1.21kg/日と最大となる(図1)。
  • 図1の回帰曲線にあてはめて、肥育中期の日増体量に対する肥育中期以降の総増体量を求めると、肥育中期の日増体量が0.59kg/日のときに肥育中期以降の総増体量が最大となり、それ以下では肥育中期の日増体量の低下とともに急激に低下している。(図2)。
  • すなわち、2シーズン放牧の肥育中期における日増体量は0.6kg/日以上を目標とすることが望ましいが、放牧地の牧草のみの肥育では平均0.6kg/日の増体を得ることは難しいため、牧草の量が不足する時期には補助飼料を給与するなどすることが必要である。
  • 2シーズン放牧と慣行肥育のコストを計算したところ、2シーズン放牧のほうが約26,000円低コストとなる。また、枝肉重量は小さくなるものの枝肉中の筋肉組織割合は大きくなり、一般的な格付けとは異なる基準での評価が必要である。(表1)

成果の活用面・留意点

  • 2シーズン放牧を行う場合の参考情報として利用できる。
  • コスト計算は補助飼料無給与を想定しており、補助飼料として購入飼料等を用いる場合は考慮する必要がある。

具体的データ

その他

  • 中課題名:寒冷積雪地帯での土地資源と自給飼料を活用した肉用牛飼養技術の開発
  • 中課題整理番号:120d2
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2015年度
  • 研究担当者:柴伸弥、渡邊彰、樋口幹人、今成麻衣、米内美晴、東山雅一
  • 発表論文等:柴ら(2015)東北農研研報、117:51-58