ジベレリン20位酸化酵素遺伝子の導入によるわい性植物の作出

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要約

アグロバクテリウム法を用いてカボチャ由来のジベレリン20位酸化酵素遺伝子を レタスに導入し、わい化個体を得た。導入遺伝子の発現により、ジベレリンの不活性化が促進 され、わい性が現われた。

  • キーワード: ジベレリン20位酸化酵素遺伝子、ジベレリン、レタス、わい化
  • 担当:野菜・茶業試験場 花き部 開花制御研究室
  • 連絡先:059ー268ー4663
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:バイテク・生理
  • 対象:葉茎菜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

植物ホルモンの一つであるジベレリンは、茎伸長、花芽形成、種子発芽等の植物の生育制御 に重要な役割を果たしている。近年のバイテク技術を用いたジベレ リンの生合成経路の解明も進んでおり、カボチャの20位酸化酵素遺伝子もその過程で見出さ れたものである。そこで、本遺伝子の野菜・花きへの導入により、 遺伝子の利用を図るとともに、形質転換植物の生育特性からその役割を解明する。

成果の内容・特徴

  • カボチャ未熟種子から単離したジベレリン20位酸化酵素遺伝子を高発現プロモーターカセッ トに接続し、アグロバクテリウムを介してレタス'バンガード'に導入し、形質転換レタスを 作成した。
  • 当代で形態異常を伴わずにわい化し、その自殖第1世代(R1)でも同様の形質が見られた1系 統(SGΩ-4)の、自殖第2世代(R2、 図1 )における導入遺伝子の遺伝的安定性の確認および表現型とその分離比との関係から、導入遺 伝子の分離と表現型の分離が一致し、導入遺伝子が優性形質として安定的に遺伝することが明 らかになった( 図2 、 3 、 表1 )。
  • わい化個体では開花期が遅れる傾向にあり、花茎は細く、花序も少ない(データ省略)。
  • 導入遺伝子の発現により、わい化個体では活性型ジベレリン(GA1)が減少し、不活性型ジベ レリン(GA17)が大量に蓄積していた( 図4 )。

成果の活用面・留意点

  • 新たな育種素材、実験系の開発等に役立つ。

具体的データ

図1 ジベレリン生合成遺伝子を導入したレタスの形態変化

図2 SGΩ-4のR2後代および非形質転換体における表現型の分離

表 SGΩ-4のR2世代における表現型の個体数と分離比

図3 PCR法による導入遺伝子の確認

図4 内生ジベレリン濃度

その他

  • 研究課題名:花きの生育における内生ジベレリンの役割
  • 植物の生育制御に関わるジベレリンの役割の分子生物学的解明
  • 予算区分:経常、「形態・生理」シーズ養成課題
  • 研究期間:平成10年度(平成6~12年)
  • 研究担当者:仁木智哉、西島隆明、腰岡政二、Theo Lange(ゲッチンゲン大学)
  • 発表論文:Production of dwarf plant by alteration of gibberellin 20-oxidase expression. 16th IPGSA (Suppl.), 107, 1998