茶園の一番茶生産力と根群分布域の深度との関係

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

茶園の一番茶生産力と土壌貫入抵抗測定器で調べた根群分布域の深度との関連を静 岡県菊川町の 農家茶園で調査し、両者に密接な関係があることを確認した。根群分布域60cm以浅 で悪影響があり、 既存の茶園の土層改良基準値は妥当である。

  • キーワード: 茶園、生産力、土壌貫入抵抗、根群分布、茶園の土層改良基準値
  • 担当:野菜・茶業試験場 茶栽培部 生理遺伝研究室
  • 連絡先:0547ー45ー4480
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:栽培
  • 対象:茶
  • 分類:研 究

背景・ねらい

最近、夏期の高温干ばつなど異常気象条件でも、安定した茶生産を維持するため、確保すべき 根群分布域の深さが改めて問題になっている。すでに茶園土層改良 基準値(主要根群域の深さ60cm)が設定されているが、茶園収量と根群域との関係を定量的に 把握するため、根群分布域の深さと一番茶生葉生産力につい て、農家茶園で実測データを取得した。

成果の内容・特徴

  • 調査と測定方法農家茶園(静岡県菊川町内、同一耕作者、'やぶきた'成園15筆、合計2.7ha) で、5か年間の一番茶生葉収量(圃場別の生葉出 荷記録から算出)と土層の根群分布可能領域の深度(以下では「根群分布域の深さ」と表現、 大起理化の土壌貫入抵抗測定器DIK-5520による最大到達深 度:27kg/cm2で、1a1点測定した茶園ごとの平均値)との関係を調べた。
  • 根群分布域の深さと一番茶生産力との関係根群域の深さで区分した場合、60cmより浅い茶園の 一番茶生葉収量は、深い茶園の85%であった( 表1 )。収量と根群分布域の深さとの関係から、60cm以浅では根群分布域の深さが収量の制限因子 になっているものと推定される( 図1 )。
  • 干ばつ前後における収量の推移と根群分布域の深さとの関係1994年と1995年は2年続きで夏期 の高温・干ばつが発生したが、収量の年次推移からみて、根群分布域の浅い茶園では異常気象 の影響が現れやすく回復も遅れる( 図2 )。
  • 既存の茶園土層改良基準値の妥当性の確認以上から、根群分布域の深さが制限因子となって生 産力に悪影響を与えるのは、既存の基準値に示された約60cm以浅の場合と判断され、基準の妥 当性が改めて確認された。

成果の活用面・留意点

  • ここに示した事例は、静岡県菊川町内の赤黄色土壌茶園で得られたデータであり、クロボク土 壌など他の土壌では適用できない恐れがある。また、この地域の緑茶生産は深蒸茶のため、芽 重型の一番茶であり、ここに示した収量レベルは普通煎茶より大きくなる。

具体的データ

表1 5カ年間の一番茶生葉収量

図1 根群分布域の深さと一番茶生葉収量との関係

図2 根群分布域の深さ別にみた一番茶生葉収量の年次推移

その他

  • 研究課題名 :茶樹の光合成・物質生産特性の解明
  • 予 算 区 分:経常
  • 研 究 期 間:平成10年度(平成8年~10年)
  • 担当:研究 担当者:松尾喜義
  • 研 究 協 力:野菜茶試養成研修第2課、第38期農業技術研修生松村旨訓
  • 発表論文等 :茶樹の生育・収量と根群域の深さについて 茶業技術研究報告 87(別冊 )、1998