土着天敵ケナガカブリダニへの薬剤抵抗性と非休眠性の導入と維持

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要約

ハダニ類の土着天敵であるケナガカブリダニ薬剤抵抗性系統 非休眠性系統を交雑し、薬剤淘汰と18°C短日条件下での飼育を組み合わせるこ とにより薬剤抵抗性と非休眠性を導入することができる。また、薬剤抵抗性と非休眠性は長期 間にわたって安定的に維持される。

  • キーワード: 土着天敵、ケナガカブリダニ、薬剤抵抗性系統、非休眠性系統
  • 担当:野菜茶試・茶栽培部・虫害研究室
  • 連絡先:0547-45-4693
  • 部会名:野菜・茶業、蚕糸・昆虫機能
  • 専門:虫害 昆虫機能
  • 対象:茶、昆虫類
  • 分類:研究

背景・ねらい

ハダニ類の土着天敵であるケナガカブリダニには薬剤抵抗性を持つ系統や非休眠性の系統が存 在する。ケナガカブリダニを施設栽培等の生物農薬として利用する ためには、薬剤抵抗性および非休眠性の両特性を持つことが必要であり、その方法として薬剤 抵抗性系統と非休眠性系統の交雑によりそれぞれの特性改変が可能 であることを示す。また、系統の増殖や維持には薬剤抵抗性と非休眠性の維持が不可欠であり 、その安定性を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 日本各地から採集したケナガカブリダニの18°C短日条件下での休眠率には大きな 地理的 変異がある。静岡県の茶園で採集した系統の休眠率は80%を示すが、石垣島系統の休眠率は0 %である (表1) 。また、いずれの系統間にも生殖的隔離はみられない。
  • 薬剤抵抗性系統と非休眠系統を交雑後、18°C短日での累代飼育と有機リン剤(DMTP 乳剤)による淘汰を組み合わせることにより、非休眠・薬剤抵抗性系統が得られる (図1 、 2) 。
  • 非休眠性は薬剤淘汰のための長日飼育でも6ヶ月以上維持され (図1) 、薬剤感受性は非休眠選抜のための無淘汰でも低く、得られた系統の特性は安定である (図2) 。
  • 抵抗性系統の有機リン剤(DMTP乳剤)に対する感受性は、薬剤による淘汰頻度にか かわらず長期間安定的である (表2) 。

成果の活用面・留意点

ケナガカブリダニは薬剤抵抗性や生態的特性に関する変異を用い、様々な特性の系統を育 成できる。

具体的データ

表1 休眠率の地理的変異

図1 非休眠雌と薬剤抵抗性雄の交雑後代の休眠率と薬剤感受性の変化

図2 薬剤抵抗雌と非休眠雄の交雑後代の休眠率と薬剤感受性の変化

表2 異なる淘汰間隔でのDMTP乳剤感受性の変化

その他

  • 研究課題名:薬剤抵抗性天敵ダニ類の有用系統の育成と累代飼育における特性維持技術の 開発
  • 予算区分 :バイテク(昆虫機能)
  • 研究期間 :平成11年度(平成5~11年)
  • 研究担当者:望月雅俊(現農環研)・武田光能・河合 章
  • 発表論文等:
    1.薬剤抵抗性ケナガカブリダニの発育,産卵能力,休眠性と生殖的親和性 .応動昆,40,121-126,1996.
    2.非休眠・薬剤抵抗性ケナガカブリダニの育成.応動昆講要,43,117,1999.