シャロット染色体添加型ネギに見出されたさび病抵抗性

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要約

シャロットの第1染色体をもつネギ単一異種染色体添加系統は、高度のさび病抵抗性 を示す。本添加系統はシャロットのもつさび病抵抗性をネギに導入するための有望な育種素材である。

  • キーワード:シャロット、ネギ、単一異種染色体添加系統、さび病抵抗性、育種素材
  • 担当:野菜・茶業試験場 野菜育種部 ユリ科育種研究室
  • 連絡先:059-268-4652
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:育種
  • 対象:ねぎ
  • 分類:研究

背景・ねらい

さび病はネギ(Allium fistulosum )の重要病害であり、抵抗性品種の育成が望まれている。これまでに、ネ ギには育種素材として十分な抵抗性をもつ系統は見出されていないが、ネギの近縁種であるタマネギ、シャロット (A. cepa)は、さび病に高い抵抗性を示すことを明らかにした。平成8年に、佐賀大学においてネギ‘九条’( 2n=16)にシャロットの染色体を一本添加した(2n=17)8種類の単一異種染色体添加系統シリーズ(1A添加型~8A添加型 )が作出された。そこで、シャロット染色体添加型ネギにおけるさび病抵抗性を明らかにし、シャロットのもつ抵抗性を ネギ育種に利用する可能性を検討した。

成果の内容・特徴

  • さび病菌の接種検定において、1A添加型ネギ (図1)の 発病程度は‘九条’と比べ有意に低い (表1、 図2)。
  • 1A添加型ネギの接種葉には、シャロットと同様の白色斑点が形成される (図2B)。
  • 1A添加型以外の添加系統からは顕著な抵抗性を示す個体は見出されていない。
  • 以上の結果から、シャロットの第1染色体上に座乗するさび病抵抗性遺伝子はネギの遺伝的背景においても高 い効果を発揮すると推察され、1A添加系統はさび病抵抗性ネギ育成のための育種素材として有望と考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 1A添加系統を育種素材としたさび病抵抗性ネギの育成には、放射線照射等により異種染色体間の転座を促進する必要 がある。
  • 1A添加系統では無発病個体は認められず、抵抗性程度はシャロットよりやや劣ることから、第1染色体以外に も抵抗性に寄与する遺伝子の存在する可能性がある。

具体的データ

図1 1A添加型ネギの体細胞染色体

表1 さび病菌の接種検定におけるネギ、シャロットおよびシャロット染色体添加型の発病程度

図2 さび病の発病程度

その他

  • 研究課題名:ネギさび病抵抗性育種
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成12年度(平成10~19年)
  • 研究担当者:若生忠幸・小原隆由・小島昭夫・執行正義(山口大)・田代洋丞(佐賀大)
  • 発表論文等:シャロット染色体を持つネギ単一異種染色体添加系統におけるさび病抵抗性.園芸学会雑誌69,(別1),240,2000.