茶害虫の送風式捕虫方法および乗用形送風式捕虫機

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要約

考案した送風式捕虫方法は、茶樹へ強制風あるいは水滴を含んだ強制風を吹き付けて害虫を吹き飛ばし、回収袋で捕獲あるいは圧死させる新しい物理的害虫防除法である。乗用形送風式捕虫機は、茶の摘採面に生息する害虫の除去率が高く、作業効率も高い。

  • キーワード:茶園、物理的害虫防除、送風式捕虫機、ウォーターアシスト
  • 担当:野菜茶研・茶業研究部・作業技術研究室、虫害研究室、業務科
  • 連絡先:電話0547-45-4654、電子メールmiyamasa@affrc.go.jp
  • 区分:野菜茶業・茶業、共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

茶の安定・持続的生産にとって害虫防除は不可欠である。現行の害虫防除は、化学合成農薬に依存しているが、農薬の散布作業は重労働であるうえ、農薬の飛散による環境負荷も懸念される。また、消費者の減農薬栽培茶あるいは無農薬栽培茶の要望が高い。そこで、風の力を利用して害虫を効率的に捕獲する新規物理的害虫防除機を開発する。

成果の内容・特徴

  • 考案した送風式捕虫方法は、害虫が寄生している茶樹の摘採面に強制風あるいは水滴を含んだ強制風(ウォーターアシスト)を吹き付けて害虫を吹き飛ばし、吹き飛ばされた害虫を回収袋で捕獲あるいは圧死させる方法である(図1)。
  • 送風式捕虫方式により、摘採面に生息するチャノミドリヒメヨコバイ、チャノキイロアザミウマ、カンザワハダニ等のダニ類、ヨモギエダシャク幼虫を回収袋で捕獲できる。ウォーターアシストでは、吹き飛ばされた害虫への衝撃力が大きくなり、チャノミドリヒメヨコバイ成虫の翅の損傷程度が大きい(表1)。
  • 開発した乗用形送風式捕虫機は、茶樹を跨ぐクローラ式走行部、2台の遠心送風機で発生した強制風を28本の吹き出し口に分配し摘採面全面に均一な強制風を当てる送風部、タンクと吹き出し口に取り付けたノズルをチューブで結び、少量の水を安定して強制風に含ませるウォーターアシスト部、ならびに吹き飛ばされた害虫を捕獲・圧死させるトラップ部から構成される。トラップでは、強制風を円滑に回収袋へ導く間口の大きな風筒を設けている。吹き出し口とトラップ先端の間隔は300mmとし、送風ダクトおよびトラップの懸架機構により強制風の風向を調節する(図2)。
  • 本機によるカンザワハダニ雌成虫の除去率は82~86%と高く、農薬などの補給時間が不要であるため10a当たりの作業時間は27分であり、防除作業時間と全作業時間の割合である作業効率は75%と高く、効率的に害虫防除作業ができる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 乗用形送風式捕虫機は、チャノミドリヒメヨコバイ、チャノキイロアザミウマなどの新芽加害性害虫を効率的に捕獲することができる。また、摘採面に生息するカンザワハダニ等のダニ類、ヨモギエダシャクの密度を低下させることができる。
  • 本機により化学合成農薬の使用量を削減でき、防除作業における生産者の重労働の解消や生産コスト削減に貢献できる。なお、本機は平成15年度市販化の予定。
  • 本機は害虫を物理的に除去する方法であり、残効性が期待されないことから処理時期や処理回数に留意する必要がある。

具体的データ

図1 送風式捕虫方法の概略

表1 強制風とウォーターアシストによるチャノ ミドリヒメヨコバイの除去率と翅損傷率

図2 乗用形送風式捕虫機の概略図

表2 乗用形送風式捕虫機の除去率と作業特性

その他

  • 研究課題名:傾斜地茶園に適応した小形高性能機械化技術の開発
    (共同研究:茶園における物理的害虫防除法の開発)
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2000~2002年度
  • 研究担当者:宮崎昌宏、武田光能、鈴木俊司、深山大介、荒木琢也、佐藤安志、
    影山 淳(株式会社寺田製作所)、西村 博(株式会社寺田製作所)
  • 発表論文等:宮崎ら(2002)送風式捕虫方法および送風式捕虫装置.特願2002-304373