チャ系統「金谷13号」のクワシロカイガラムシ抵抗性機構とDNAマーカー

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要約

「金谷13号」のクワシロカイガラムシ抵抗性は、幼虫生存率の低下や未産卵雌の生体重の低下として現れ、雌成虫の蔵卵数を低下させる。この抵抗性は「さやまかおり」と同じDNAマーカー(e-RAPD:MSRS8E)によって識別できる。

  • キーワード:チャ、クワシロカイガラムシ、品種抵抗性、DNAマーカー
  • 担当:野菜茶研・茶業研究部・虫害研究室、育種素材開発チーム
  • 連絡先:電話0547-45-4693、電子メールtakedada@affrc.go.jp
  • 区分:野菜茶業・茶業
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

クワシロカイガラムシはチャの重要害虫であり、防除困難な害虫として抵抗性品種の利用による防除対策が求められている。本種に対する抵抗性品種として「さやまかおり」や「みなみさやか」が知られている。抵抗性品種を育成し実用化を推進するためには、抵抗性機構の異なる遺伝子や遺伝的背景の異なる抵抗性素材が必要である。そこで、var. assamica に由来するクワシロカイガラムシ抵抗性を持つ「金谷13号」と「さきみどり」の交雑後代を用いて「金谷13号」のクワシロカイガラムシ抵抗性の発現機構を解明するとともに、抵抗性の分離とDNAマーカーとの連鎖関係を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • クワシロカイガラムシに抵抗性を示す「金谷13号」の交雑F1の抵抗性個体は、幼虫生存率の低下、蔵卵数の低下を示す(図1、2)。幼虫生存率は越冬世代虫で顕著に低下するが、夏世代虫(第2世代)の幼虫生存率にはばらつきがみられる(図1)。越冬世代雌成虫は抵抗性個体においても蔵卵数の多い場合がみられるが、夏世代虫の蔵卵数は抵抗性個体で顕著に低下する(図2)。
  • クワシロカイガラムシに対する抵抗性検定法として雌成虫の蔵卵数の多少が用いられているが、夏世代虫の蔵卵数と未産卵雌成虫の生体重には高い相関が認められる(図3)。このように、蔵卵数に比べて調査が容易な生体重によって抵抗性の検定を行うことができる。
  • 「さやまかおり」から見出されたクワシロカイガラムシ抵抗性遺伝子座(MSR-1 )と連鎖するDNAマーカーMSRS8Eが「金谷13号」×「さきみどり」のF1世代においても1:1分離し、抵抗性とMSRS8Eとの間には連鎖関係が認められる(表1)。「金谷13号」の抵抗性もMSR-1 座によると推定され、その交雑後代はMSRS8Eによる選抜が可能である。

成果の活用面・留意点

  • 未産卵雌の生体重は、夏世代虫のふ化から40~45日後に10~20匹をまとめて計量する。越冬世代虫では、蔵卵数と抵抗性遺伝子の有無には明瞭な傾向はみられず、成虫化率による検定が妥当である。
  • var. assamica に由来する「金谷13号」の抵抗性とvar. sinensis に由来する「さやまかおり」の抵抗性のMSR-1 座におけるアリルの異同については、さらに詳細な検討が必要である。また、MSRS8EとMSR-1 座との間で遺伝的組換えが生じる可能性に留意する必要がある。

具体的データ

図1「金谷13 号」と「さきみどり」の交雑F1におけるクワシロ 図2 「金谷13 号」と「さきみどり」の交雑F1におけるクワシロ

図3「金谷13 号」と「さきみどり」の交雑F1におけるクワシロカイガラムシ越冬世代虫と第2世代虫の未産卵雌 成虫の生体重と蔵卵数との相関およびDNAマーカーMSRS8Eの有無との関係

表1「金谷13 号」と「さきみどり」の交雑 F1 におけるDNAマーカーとクワシロカイガラムシ抵抗性の関係

その他

  • 研究課題名:クワシロカイガラムシに対する品種抵抗性と利用技術の開発
  • 課題ID:11-06-02-01-21-04
  • 予算区分:交付金(所特定)
  • 研究期間:2003~2004年度
  • 研究担当者:武田光能、田中淳一
  • 発表論文等:武田・田中(2004)茶研報No.98(別):72-73.