水中における茶カテキン/カフェイン複合体の結合エネルギー

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要約

主要な茶カテキン類EGCg、ECg、EGC、ECは、少なくとも5.0mmol/Lまでは、カフェインと化学量論比1:1の複合体を形成する。1H-NMRスペクトル滴定法により算出されるその結合エネルギーは、それぞれ2.7、2.6、2.2、2.0kcal/mol(28℃)である。

  • キーワード:カテキン/カフェイン複合体、化学量論比、結合エネルギー
  • 担当:野菜茶研・機能解析部・茶品質化学研究室
  • 連絡先:電話0547-45-4982、電子メールhayn@affrc.go.jp
  • 区分:野菜茶業・茶業
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

ガレート型カテキン(渋味物質)とカフェイン(苦味物質)は複合体を形成することが知られているが、この現象は茶の味や機能性に影響を与えることが予想される。そこで、非ガレート型カテキンを含めた緑茶の主要カテキン類のカフェインとの複合体形成能力に関して定量的評価を行うために、化学量論比、及び結合エネルギーを求める。またNMRスペクトルから、これらの複合体の構造を解析する。

成果の内容・特徴

  • カテキンとカフェインの濃度の合計が5.0mmol/Lの系でJobプロットを行った場合、いずれの場合もグラフはモル比0.5で最大値となる(図1)。このことは、EGCg、ECg、EGC、ECは、少なくとも5.0mmol/Lまでは、カフェインと化学量論比1:1の複合体を形成することを示している。
  • 1H-NMRスペクトル滴定曲線(図2)により算出されたカテキン/カフェイン複合体の28℃における結合エネルギー(水中)は、EGCg、ECg、EGC、ECに対して、それぞれ2.7、2.6、2.2、2.0kcal/molである(図3)。結合エネルギーの値が大きいほど、複合体は安定であることを意味する。これまで、カフェインに対する親和性が不明であった非ガレート型カテキン(EGC、EC)も充分な複合体形成能力を有しているが、ガレート型カテキン(EGCg、ECg)と比較すると、その能力は低い。
  • カテキン/カフェイン混合水溶液の1H-NMRの化学シフト変化とNOESYスペクトル(表1)は、複合体形成にカテキン分子内の全ての芳香環が関与することを示している。

成果の活用面・留意点

  • カテキン/カフェイン複合体形成による苦渋味変化のメカニズムの解明に活用できる。
  • さらに高濃度の系では、カテキン分子間、或いはカフェイン分子間の自己会合を考慮する必要がある。

具体的データ

図1 カテキン(2, 3, 4, 5)/カフェイン(1)複合 体形成に関するJobプロット(重水中、pH 6) : カフェインのC8-Hの化学シフト変化, [X]0: 化 合物Xの初濃度 図2 カテキン/カフェイン混合系の1H-NMRスペクトル 滴定曲線

 

図3 結合エネルギーの算出方法 表1 カテキン/カフェイン系(重水中、モル比=1:1)の NOESYシグナル

その他

  • 研究課題名:センサー等を用いた茶の味評価法の開発
  • 課題ID:11-10-04-01-12-04
  • 予算区分:品質評価法
  • 研究期間:2004~2006年度
  • 研究担当者:林 宣之、氏原ともみ、木幡勝則
  • 発表論文等:Hayashi et al. (2004) Biosci. Biotechnol. Biochem. 68: 2512-2518.