疫病、青枯病、PMMoV複合抵抗性台木用トウガラシ新品種「台パワー」(旧系統名 トウガラシ安濃4号)

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要約

「台パワー」は疫病、青枯病およびPMMoV(P1.2)に対して強度の抵抗性を示す。ピーマンおよびトウガラシ類用台木として利用できる。

  • キーワード:ピーマン、トウガラシ、抵抗性台木、疫病、青枯病、PMMoV
  • 担当:野菜茶研・野菜育種研究チーム
  • 区分:野菜茶業・野菜育種
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

疫病、青枯病およびPMMoV(トウガラシマイルドモットルウイルス)によるモザイク病は、わが国のピーマンおよびトウガラシ類 の栽培において、大きな被害を及ぼす土壌伝染性病害である。これら病害を回避するために近年、抵抗性台木への接ぎ木栽培が導入されつつあるが、3病害に対 して強度の抵抗性を有する台木用品種はなく、その育成が期待されている。そこで、疫病、青枯病およびPMMoV(P1.2)に対して強度の抵抗性を有する台木用品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「台パワー」は、青枯病抵抗性のピーマン在来品種「三重みどり」と疫病抵抗性の素材系統「SCM334」との交雑後代系統に、PMMoV(P1.2)抵抗性のピーマン市販品種「ベルマサリ」を交雑した後代から選抜した固定系統である(図1)。
  • 「台パワー」は疫病および青枯病に対して「ベルマサリ」より強い抵抗性を示し、PMMoV(P1.2)に抵抗性を発揮するL3遺伝子を有する(表1)。
  • 「台パワー」は「ベルマサリ」と比較し、第1分枝の節位が高く、草姿がやや立性で、果実は中長形である(表2、図2)。
  • 「台パワー」の接ぎ木の難易は「ベルマサリ」と同等で、接ぎ木栽培時の収量は「ベルマサリ」台とほぼ同等である(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 「台パワー」は疫病および青枯病に対して強度抵抗性を示すが、高温・高湿・高菌密度条件下では発病する可能性があるため、土壌消毒など他の防除法を併用することが望ましい。
  • 「台パワー」はPMMoV(P1.2)に対して過敏感反応型の抵抗性を示すため、PMMoVおよびToMV(トマトモザイクウイルス)が発生している地域では、穂木に「台パワー」と同じL3遺伝子を有する品種を用いる必要がある。
  • 「台パワー」はPMMoV(P1.2.3)に対して抵抗性を示さないので、PMMoV(P1.2.3)が発生している地域では用いない。
  • 「台パワー」の果実はピーマン型で辛みはないが、果面に凹凸があり、青果用穂木品種としての利用には適さない。

具体的データ

図1 「台パワー」の育成系統図

表1 「トウガラシ安濃4号」の疫病・青枯病抵抗性検定結果およびPMMoV抵抗性遺伝子の種類

表2 「トウガラシ安濃4号」の植物体特性および接ぎ木栽培時の収量性

図2 「台パワー」の植物体(左)と未熟果実(右)

その他

  • 研究課題名:病虫害抵抗性、省力・機械化適性、良食味等を有する野菜品種の育成
  • 課題ID:211-j
  • 予算区分:基盤研究費、委託プロ(ブラニチ6系)
  • 研究期間:1997~2007年度
  • 研究担当者:松永啓、齊藤猛雄、吉田建実、山田朋宏、佐藤隆徳