茶園における施肥幅拡大による窒素利用効率の向上

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要約

茶園において、樹冠下まで施肥幅を拡大すると、減肥をしても慣行施肥と同等の収量・品質が得られるのは、施用窒素の吸収利用効率が高まるためである。また、施肥幅を拡大すると、うね間土壌の強酸性が改善される。

  • キーワード:茶園、茶樹、施肥幅、うね間、樹冠下、窒素
  • 担当:野菜茶研・茶施肥削減技術研究チーム
  • 区分:野菜茶業・茶業、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

茶園では、慣行的な窒素多肥栽培によって施肥位置であるうね間の土壌環境が悪化しており、それが窒素の利用効率低下の一因となっ ている。吸収されなかった窒素は、環境への大きな負荷となることから、これまでに、収量・品質を低下させることなく施肥量を削減できる樹冠下施肥技術が開 発されているが、いまだ普及しているとは言い難い。普及しない一つの理由として、過去に多量に施用された窒素成分が樹体や土壌に蓄積しているために、一時 的な減肥の影響は発現しないが、長期的には収量・品質が低下するのではないかという不安があるためと考えられる。樹冠下施肥による減肥を安心して使える技 術とするためには、窒素利用効率向上を裏付けることが必要である。そこで、施肥幅を樹冠下まで拡大して茶樹の根域を広く活用することが、茶園における窒素 利用効率の向上につながることを明らかにし、樹冠下施肥技術の普及に役立てる。

成果の内容・特徴

  • 施肥幅を樹幹下まで拡大(広幅施肥)することで、10a当たりの年間窒素施用量を30kgNに減肥しても同等の収量・品質が得られる(表1)。
  • 肥料に上乗せ施用した重窒素標識硫安由来の茶葉収穫に伴って持ち出される窒素量は、施肥時期にかかわらず慣行のうね間施肥より広幅施肥の場合で大きく、この結果は、広幅に施用された窒素肥料の利用効率が高いことを裏付ける。その利用効率の高さは施肥翌年にも認められる(図1、図2)。
  • 広幅施肥によって、土壌のpH、ECともにうね間と樹冠下の差が減少し、うね間土壌の強酸性が改善される。その傾向は、施肥削減と組み合わせることでより顕著となる(図3)。

成果の活用面・留意点

  • この成果は、茶園における樹冠下施肥による施肥量削減技術を普及させる際に、その有効性を裏付ける情報として活用できる。
  • この成果で示した広幅施肥は、うね間施肥の施肥幅を樹幹下中程まで拡大した施肥法である。

具体的データ

表1 施肥幅と施肥量別にみた収量および荒茶品質(3ヶ年の平均値)

図1 窒素利用効率解析のための施肥位置と施肥幅

図2 施肥幅の違いと標識肥料持ち出し量1)との関係

図3 施肥幅の違いと土壌pH、ECの鉛直分布との関係

その他

  • 研究課題名:茶の効率的施肥技術の開発及び少肥適応性品種との組合せによる窒素施肥削減技術の開発
  • 課題ID:214-m
  • 予算区分:基盤研究費、交付金プロ(自然循環)、交付金プロ(精密畑作)
  • 研究期間:2003~2007年度
  • 研究担当者:野中邦彦、廣野祐平、吉田一史(香川農試満濃分場)