伝染環の遮断に重点を置いたトマト黄化葉巻病の総合防除体系

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要約

タバココナジラミ(バイオタイプQ)が媒介するトマト黄化葉巻病を防除するためには、防虫ネット等による媒介虫の施設への侵入防止、発病株の除去と気門封鎖剤等を活用した媒介虫の防除、栽培終了時の蒸し込みによる保毒虫の逃亡防止などが重要である。

  • キーワード:トマト黄化葉巻病、虫媒性ウイルス、TYLCV、タバココナジラミ、総合防除
  • 担当:野菜茶研・野菜IPM研究チーム
  • 代表連絡先:電話050-3533-3863
  • 区分:野菜茶業・野菜生産環境
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

トマト黄化葉巻病はタバココナジラミが媒介するウイルス病で、関東以西のトマト栽培地帯で重要な生産阻害要因となっている。本病の発生防止には媒介虫の防除が必要であるが、近年殺虫剤抵抗性が高度に発達したバイオタイプQが国内に侵入したため、薬剤を主体とした防除が困難となっている。そのため、殺虫剤抵抗性が発達しにくい物理的防除法や病原ウイルス(TYLCV)の伝染環を遮断する対策などを組み合わせた総合防除対策が生産現場等で求められている。こうしたニーズに対応するため、個別防除技術を開発・統合して総合防除体系を構築し、マニュアル化する。

成果の内容・特徴

  • ウイルス感染や媒介虫の寄生のない健全苗を定植する。育苗期ならびに定植後の栽培期間中は、施設開口部に0.4mm以下の目合いの防虫ネットを展張して媒介虫の侵入を防ぐ。黄色粘着板等で媒介虫を捕殺する。銀色反射資材や紫外線カットフィルムで媒介虫の侵入を防ぐ。育苗期や定植時の粒剤処理やその後の薬剤防除では、抵抗性の発達を防ぐため同系統の薬剤連用を避ける。
  • 栽培期間中の発病株は抜き取り処分する。また、薬剤抵抗性が発達しにくい気門封鎖剤や糸状菌製剤を活用して媒介虫を防除する。越冬後の気温上昇期には、天敵製剤や糸状菌製剤などを活用して媒介虫の増殖を抑制する。
  • 栽培終了時には株を切断・抜根して枯死させ、施設を密閉して蒸し込み処理を行い、保毒虫を殺して施設外への逃亡を防ぐ。作物残渣は土中に埋めるか焼却する。
  • 施設内外の雑草は媒介虫の増殖源となるため除去する。芽かきした茎葉や不良果から派生する野良生え株はウイルス源となるので除去する。家庭菜園や露地栽培の発病株もウイルス源となるので、栽培者に除去を依頼する。TYLCVの伝染環と以上の防除対策を実施すべき時期を図1に示す。
  • 抵抗性品種でもウイルスは感染するので、保毒虫が発生しないように適切な防除を行い、保毒虫の施設外への逃亡を防止する。

成果の活用面・留意点

  • 総合防除マニュアルは野菜茶業研究所のホームページからPDFファイルとして入手できる。(http://www.naro.affrc.go.jp/vegetea/joho/index.html)
  • 目合いの細かい防虫ネットを展張すると施設内の温度上昇が危惧されるが、循環扇と極細糸ネットの併用で温度上昇の防止が可能である。
  • 本マニュアルには広島県、熊本県、宮崎県などでの物理的防除技術を活用した防除体系事例を掲載してあるが、栽培施設の形状や作型は産地によって多様なので、活用にあたっては現地の実情に合わせた適用が必要である。

具体的データ

図1 温暖地のトマト周年栽培地帯におけるトマト黄化葉巻病の伝染環(模式図)と媒介虫防除のポイントとなる時期(★印、付した数字は上記防除ポイントの内容を示す)

その他

  • 研究課題名:野菜における土壌微生物、天敵の機能解明と難防除病害虫制御技術の開発
  • 中課題整理番号:214k
  • 予算区分:実用技術
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:本多健一郎、北村登史雄、飯田博之、星野滋(広島農技セ)、松浦昌平(広島農技セ)、樋口聡志(熊本農研セ)、溝辺真(宮崎総農試)