キュウリうどんこ病抵抗性を制御するQTLの同定

要約

うどんこ病高度抵抗性キュウリ系統CS-PMR1および中程度抵抗性品種「山東」の持つうどんこ病抵抗性には、それぞれ7カ所および2カ所のQTLが関与する。低温時に十分な抵抗性を発揮するためにはこれら9カ所のうち4カ所以上のQTLを持つ必要がある。

  • キーワード:キュウリ、うどんこ病抵抗性、低温、QTL解析、組換え型自殖系統
  • 担当:日本型施設園芸・果菜類品種開発
  • 代表連絡先:電話 050-3533-3861
  • 研究所名:野菜茶業研究所・野菜育種・ゲノム研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景)・ねらい

うどんこ病はキュウリ栽培において主要な病害の一つである。キュウリの収穫は連日行なわれるため化学合成農薬による防除は難しく、うどんこ病抵抗性品種が必要とされている。現行の抵抗性品種は中高温条件下(約25°C以上)で抵抗性を示すが、比較的低温条件下(約20°C以下)では罹病するため、秋から春にかけての発病が問題となっている。うどんこ病高度抵抗性キュウリ系統CS-PMR1は低温条件下においても高度の抵抗性を示すことから、抵抗性の育種素材として有望である。そこで、CS-PMR1および中程度抵抗性品種「山東」との交配由来の組換え型自殖系統(F2を個体別に何代も自殖で増殖した系統)を用いてうどんこ病抵抗性のQTLを同定する。

成果の内容・特徴

  • うどんこ病高度抵抗性キュウリ系統CS-PMR1と中程度抵抗性品種「山東」との交配に由来する組換え型自殖系統(F8、111系統)を供試し、複数の検定方法によるうどんこ病抵抗性検定の結果を用いてQTL解析を行うと、CS-PMR1および「山東」由来のうどんこ病抵抗性に関与するQTLがそれぞれ7カ所および2カ所検出できる(図1)。
  • 組換え型自殖系統のうち低温で十分な抵抗性を示すのは9系統で、これら9系統は少なくとも4カ所のQTLを保持している(表1)。

成果の活用面・留意点

  • うどんこ病の接種検定は、Podosphaera xanthii(syn. Sphaerotheca fuliginea ex Fr. Poll.)の菌系PxA(Fukino et al.(2008)Theor. Appl. Genet. 118:165-175)を用い、リーフディスクによる25°Cおよび20°Cにおける人工接種法(リーフディスク法)、春作および秋作のハウスにおける自然発病観察法ならびに幼苗検定法(Sakata et al. (2006) Theor. Appl. Genet. 112:243-250)により行った結果である。
  • CS-PMR1(JP番号225994)の種子は農業生物資源ジーンバンクから入手できる。また、CS-PMR1および中程度抵抗性品種「Rira」を抵抗性素材とする高度うどんこ病抵抗性の「きゅうり中間母本農5号」(第19683号)が2010年8月13日に品種登録(第19683号)されている。

具体的データ

図1,表1

その他

  • 中課題名:果菜類の高品質化・生産性向上に資する品種・系統の育成
  • 中課題整理番号:141f0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2007~2013年度
  • 研究担当者:吹野伸子、吉岡洋輔、杉山充啓、坂田好輝、松元哲
  • 発表論文等:Fukino N. et al. (2013) Mol Breed 32:267-277