ODSカラムを用いたビタミンCの高速液体クロマトグラフィー分析の効率化

要約

ビタミンCの高速液体クロマトグラフィー分析において、ODSカラムとポストカラム誘導体化検出法の組み合わせにより、アスコルビン酸とデヒドロアスコルビン酸の分離が改善し、測定時間を従来法の半分以下に、カラムのコストを1/5以下にできる。

  • キーワード:ビタミンC、ODSカラム、ポストカラム誘導体化、高速液体クロマトグラフィー
  • 担当:日本型施設園芸・果菜類品種開発
  • 代表連絡先:電話 050-3533-3861
  • 研究所名:野菜茶業研究所・野菜育種・ゲノム研究領域、野菜病害虫・品質研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

ビタミンCは、カラーピーマンをはじめとする野菜の重要な品質成分である。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によるアスコルビン酸(AsA)とデヒドロアスコルビン酸(DHA)の定量には、従来から、Yasuiら(1991)によるポストカラム誘導体化検出法が多く用いられてきたが、分離に用いるイオン交換カラムが高価な上に、AsAとDHAのピークが近接して分離が悪く、分離能も低下しやすい等の問題がある。そこで、多数の試料を効率よく分析するために、比較的安価で耐久性が高いODS (Octadecylsilane)カラムによる分離と、ポストカラム誘導体化検出法を組合せることで、迅速かつ低コストな分析法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 3種類の溶離液と8種類のODSカラムを比較検討した結果、カラム:Imtakt Unison UK-C18 (3μm, 4.6mm × 150mm)、溶離液:2mM HClO4 1.0 mL/min、カラム温度:40°C、ポストカラム反応液:(100 mM NaOH、100 mM NaBH4) 0.5mL/min、検出:UV300nmの条件で良好な分離が得られる(図1)。
  • 従来のイオン交換カラムと比較して、AsAとDHAの分離係数(α)は1.07から1.26に改善する。分析時間も10分から4分に短縮される(図1、表1)。
  • 改良法ではカラーピーマンのビタミンC含量を再現性良く分析できる(図2)。
  • 希釈されたAsAおよびDHAの標準液を用いて検出限界を検討した結果、AsAは3.7μg/L、DHAは13.6μg/Lであり、野菜全般のビタミンC分析法として十分な感度を有する。

成果の活用面・留意点

  • 溶離液と反応液は、超音波と減圧を併用して十分に脱気してから用いる。
  • DHAの標準液は、試薬を溶解して調製するのではなく、AsAを0.1% 2,6-ジクロロインドフェノール溶液によって定量的に酸化して調製すると再現性が良い。
  • 生鮮試料の調製条件は、試料10gに5.6%メタリン酸溶液90mLを加えてホモジナイズ後、ろ過した上清を分析試料として用い、HPLCには10μLを注入する。
  • 従来のイオン交換カラムでは、分析数が多くなるにつれてAsAとDHAの分離能の低下が認められるが、ODSカラムの場合には1000検体程度の分析では分離能は低下しない。カラム価格は約1/5である(表1)。

具体的データ

図1~2

その他

  • 中課題名:果菜類の高品質化・生産性向上に資する品種・系統の育成
  • 中課題整理番号:141f0
  • 予算区分:交付金、科研費、農食事業
  • 研究期間:2011~2013年度
  • 研究担当者:永田雅靖、松永啓
  • 発表論文等:永田(2013)日食科工誌、60(2):96-99