近赤外分光法を用いるトマト糖度非破壊計測時の推定精度改善

要約

近赤外分光法(非接触の拡散反射測定)を用いてトマト糖度を非破壊計測する場合、説明変数として766、872、882、904nmを採用している従来法は、大きな誤差を発生することがある。説明変数として856、876、902nmを採用すると非破壊計測精度が改善される。

  • キーワード:トマト、果実重、非破壊測定、説明変数、選果ライン
  • 担当:加工流通プロセス・品質評価保持向上
  • 代表連絡先:電話 050-3533-3861
  • 研究所名:野菜茶業研究所・野菜病害虫・品質研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

近赤外分光法を用いる農産物の品質の非破壊計測法は実用化されている。しかし、その非破壊計測値は誤差が発生していたとしてもその程度がわかりにくい。また、トマトに特有の問題として、ミニから大玉まで果実重で一桁異なるサイズのものが流通しているが、果実重が非破壊計測精度に及ぼす影響は明らかではない。
そこで、メロンやイチゴ等の糖度の非破壊計測法開発にも取り組んだ結果を元に、トマト糖度の非破壊計測精度を改善する方法を提案する。

成果の内容・特徴

  • 説明変数として4波長(766、872、882、904 nm)での吸光度を採用している、現在普及している非破壊計測法では、例えば、ゼブラトマトで大きな誤差を発生する(図1)場合があるが、説明変数から766 nmの吸光度を除いて3波長(856、876、902 nm)の吸光度に整理することによりゼブラ果のような果実でも良好な糖度計測が可能となる(図2)。
  • 拡散反射モードで、果実赤道部の最も着色の薄い部分と同じく赤道部の反対側の着色の濃い部分を計測し、それらの平均値を1果実の平均糖度とすることにより、着色期以降の約10 g以上のトマト果実に適用可能な、品温の影響を受けにくい(4~35°C保存のトマトに対応可)非接触非破壊計測(図3)ができる。
  • 重さ10~20 gの果実でも非破壊計測精度は改善するが、非破壊計測値が破壊測定値である実測値よりも低く出やすい。具体的には、糖度の実測値が高くなるほど実測値と非破壊計測値との差(誤差)が大きくなるので、必要に応じて両値の関係を求めて非破壊計測値を補正する。また、重さ100g未満のトマトは誤差が大きくなる(図4)。なお、非破壊計測値は実測値に対して最大で±20%、平均で±7%程度の誤差である。

普及のための参考情報

  • 普及対象:生産者、民間企業、国公立試験研究機関等
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:普及台数17台
  • その他:対象機種は(株)クボタ製フルーツセレクターK-BA100、K-BA100R、K-SS300、K-SS300LCであるが、ハードウエアが必要な要件(特に970 nm付近の水の吸収帯を測定できる性能であること)を満たし、かつ、同様の測定法であれば、 異なった品目や他社製の機器でも適用可能である。本法を導入する場合は、機差補正(非破壊計測用検量線の切片と係数を調整)することが望ましい。また、同じ型式の機器でも機差が大きいため、補正しにくいことがある。
  • リコペン等の同時非破壊計測(2009年度普及成果)や機器(K-SS300LC)のラインへの組込が可能である。

具体的データ

図1~4

その他

  • 中課題名:農畜産物の品質評価・保持・向上技術の開発
  • 中課題整理番号:330a0
  • 予算区分:交付金、競争的資金(実用開発事業)
  • 研究期間:2007~2014年度
  • 研究担当者:伊藤秀和
  • 発表論文等:Ito. H. (2014) JARQ 48(2): 111-120