CO2施用と加湿制御を組み合わせた場合のトマトの生育と養分吸収

要約

促成栽培において、CO2施用条件下で湿度を高く管理すると、CO2施用の効果が高まり乾物重が増加する。しかし、蒸散量が低下するので養水分吸収量が減少し、葉のN、P、K、Ca、Mgの含有率は低下する。蒸散量を意識した加湿制御を行うことが必要である。

  • キーワード:CO2施用、湿度制御、乾物重、養水分吸収
  • 担当:日本型施設園芸・施設野菜生産
  • 代表連絡先:電話029-838-8823
  • 研究所名:野菜茶業研究所・野菜生産技術研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

湿度は光合成速度に大きく影響する。これは湿度が高くなると気孔が開きやすくなり、葉内へCO2を取り込み易くなるためであると考えられている。オランダで果菜類の収量が多いのは、湿度を意識した環境制御技術を積極的に導入しているためだと考えられており、国内でもCO2施用を行う場合にハウス内の湿度を高く維持する試みが進められている。しかし一方で、CO2施用時に湿度を高く管理しても収量が高くならない事例もあり、CO2施用時の適切な湿度管理の検証が望まれている。

成果の内容・特徴

  • トマト促成栽培において、ミスト噴霧でハウス内を加湿すると、CO2施用効果が高まり、作物の乾物重が増加する(表1、図1)。
  • 加湿を行うと吸水量が減少する(図3)。
  • 加湿を行うと、水とともに吸収される養分が減り、葉のP、K、Ca、Mg含有率が低下する(図2)。培養液濃度を高めても体内を移動しにくいCa含有率は回復しない。

成果の活用面・留意点

  • 特に気温が低く、換気が少ない場合に加湿制御を行うと、湿度が高い時間が長くなり、蒸散が低下して、養分吸収が抑制されやすいので留意する。
  • 加湿制御を行う場合は循環扇などを併用してハウス内の空気を循環させ、蒸散を促進し、養水分吸収を促す工夫が必要である。
  • 湿度を高めると病害発生のリスクが高まるので留意する。
  • 本成果は以下の条件で行った実験から得られたものである。鉄骨ガラス温室2棟を供試し、一方をCO2施用のみ(対照区)、もう一方をCO2施用にミスト噴霧による加湿を行った(加湿区)。トマト品種「りんか409」を2013年10月12日に定植し、同年11月20日にCO2施用を開始した。培養液(大塚A処方)濃度を低EC区(0.8~1.2 dS m-1)と高EC区(1.6~1.9 dS m-1)を設定した。解体調査は2月20日に行った。

具体的データ

その他

  • 中課題名:高生産性と低環境負荷を両立させる施設野菜生産技術の体系化
  • 中課題整理番号:141a0
  • 予算区分:競争的資金(農食事業)
  • 研究期間:2012~2014年度
  • 研究担当者:鈴木真実、梅田大樹、岩崎泰永
  • 発表論文等:Suzuki, M. et al.(2015)Scientia Horticulture. 187:44-49