脂肪酸カルシウムによるエネルギー補給が早期離乳子牛の飼料消化に及ぼす影響

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要約

7週齢末に離乳した黒毛和種早期離乳子牛に脂肪酸カルシウムを8%添加給与することにより、TDN摂取水準は9%高まる。また、脂肪酸カルシウム添加によ る第一胃内炭水化物消化への抑制作用は、窒素源の添加により軽減しうる。また、窒素源の繊維消化への影響は第一胃内分解性および離乳後の経過週齢によって 異なる。

  • 担当:中国農業試験場・畜産部・栄養生理研究室
  • 連絡先:08548-2-0144
  • 部会名:畜産
  • 専門:動物栄養
  • 対象:家畜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

受精卵移植等により乳用牛から生産された黒毛和種子牛では、乳用種子牛に比べ固形飼料摂取が少ないため、早期離乳後のエネルギー摂取不足から発育が制限されやすい。また、近年高泌乳牛等で脂肪酸カルシウムなどの保護油脂によるエネルギー補給技術が普及しつつあるが、早期離乳子牛では反すう胃内消化および飼料摂取への影響から、脂肪酸カルシウムのエネルギー補給源としての添加はあまり行われていない。そこで、早期離乳子牛へのエネルギー補給技術確立の一環として、脂肪酸カルシウムの添加を行い、さらに脂肪酸カルシウムと併給する窒素源について消化管部位別の炭水化物消化へ及ぼす影響を検討する。

成果の内容・特徴

  • 7週齢末で早期離乳した黒毛和種子牛に15週齢までパーム油脂肪酸カルシウム(CSFA)を濃厚飼料に8%添加給与すると、TDN摂取水準は9%高まり増体速度が10%高まる(表1)。
  • CSFAの8%添加は第一胃内での炭水化物消化を抑制する傾向があるが、炭水化物の全消化管消化率への影響は認められない(図1.a))。これは、腸管での消化が代償的に亢進するためと推察される。
  • CSFAを濃厚飼料とともにペレット化し添加給与するとデンプンの第一胃内消化率が低下し、また、15週齢時には第一胃内NDF消化率が16%にまで低下した(図2.a))。
  • 一方、CSFAの添加給与と同時に粗タンパク質として3%の尿素(窒素として0.5%)あるいは魚粉を濃厚飼料に添加すると、第一胃内総炭水化物消化率はそれぞれ62%および65%(9~18週齢平均)まで高まり、CSFA無添加の場合(64%,9~15週齢平均)と同等の値を示す(図1.a),b))。それと同時に乾草の摂取割合も13.9%(尿素区)および14.9%(魚粉区)まで増加する。
  • 窒素源として魚粉を添加するとNDFの第一胃内消化率は週齢の経過とともに低下する傾向を示す。それに対し、尿素を添加すると離乳直後は第一胃微生物の尿素への適応に時間がかかるためNDF消化率は低い値を示すが、週齢の経過とともに消化率が向上する(図2.b))。

成果の活用面・留意点

早期離乳子牛への脂肪酸カルシウム給与によるエネルギー補給技術において基礎的知見として利用できる。

具体的データ

表1.飼料摂取量(試験1)

 

図1.総炭水化物消化率

 

図2.第一胃内デンプンおよびNDF消化率

 

その他

  • 研究課題名:早期離乳子牛における反芻胃機能と蛋白代謝に関する研究
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成8年度(平7~8年)
  • 研究担当者:林  義朗、小迫孝実、西村宏一、土肥宏志
  • 発表論文等:
    脂肪酸カルシウム給与が黒毛和種早期離乳子牛の飼料利用性に及ぼす影響、第91回日畜産学会講演要旨、30、1996.
    脂肪酸カルシウム給与時の窒素源が黒毛和種早期離乳子牛の炭水化物、脂肪消化に及ぼす影響、第93回日畜産学会講演要旨、75、1997.
    ほか